研究課題/領域番号 |
25800301
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
大野 剛 学習院大学, 理学部, 助教 (40452007)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炭酸塩 / 同位体分別 / マグネシウム / カルシウム / ストロンチウム / MC-ICP-MS |
研究概要 |
本研究は、炭酸塩鉱物中のマグネシウム・カルシウム・ストロンチウムの同位体分別から表層環境変動を読み取るための新たな研究手法の開発を目指している。本年度は、炭酸塩鉱物沈澱時におけるマグネシウム・カルシウム・ストロンチウム同位体分別係数を求めるための実験方法の確立を進めた。 恒温槽を用い様々な温度に制御されたビーカー内にて、塩化カルシウムと炭酸水素ナトリウムを主要出発物質とし、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウムの添加量を変えることで、純粋なカルサイト及びアラゴナイトを沈殿させた。母液と沈澱した炭酸塩鉱物に含まれる同位体比を測定することにより、同位体分別係数の温度依存性を調べることが可能となった。 本研究で得られたカルシウムの同位体分別係数は、カルサイトよりもアラゴナイトで大きくなり、過去の報告と一致した。一方、マグネシウムではカルサイトにおいて同位体分別が大きく、ストロンチウムでは有為な違いが見られなかった。マグネシウムにおける炭酸塩鉱物中の酸素との結合距離は、カルシウムとは異なり、カルサイトで大きく、アラゴナイトで小さいことが報告されている。マグネシウムの同位体分別はこの違いを反映したものと考えられる.ストロンチウムについては酸素との結合距離に差は見られていないため、同位体効果にも違いが見られなかったものと考えられる。これらのことからマグネシウム・カルシウムの同位体分別を用いることにより、炭酸塩鉱物沈澱時の結晶構造を調べられる可能性が示唆され、ストロンチウムからは沈澱時の結晶構造によらず海洋の情報が得られることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標である金属元素の同位体分別係数を調べるための実験方法を確立し、マグネシウム・カルシウム・ストロンチウムについて同位体分別係数の温度依存性を当初の計画通り調べており、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、今後は原生代後期からカンブリア紀の炭酸塩鉱物中マグネシウム・カルシウム・ストロンチウムの同位体分析を進め、炭酸塩鉱物に保存されている古環境情報を解読していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度他機関で使用する予定であった分析装置が本学に設置された。分析のための旅費等に充てる予定であった研究費を次年度本格稼働する分析装置に充てることにより、研究が当初の計画以上に進むと考えられるため使用計画を変更することとした。 本研究の重要な同位体分析を本学設置の分析装置で行うことが可能になった。このため、次年度使用額分は分析装置の改良に充てる予定である。また、次年度分については当初の予定通り使用する計画である。
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