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本研究では炭酸塩鉱物に含まれるマグネシウム・カルシウム・ストロンチウムなどの金属元素の同位体分別から表層環境変動を読み取るための新規研究手法の開発を目指している。本年度はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムの炭酸塩鉱物沈澱反応における同位体分別係数を調べるため沈澱生成法を改良し、天然を模した母液からでも純粋な結晶構造（カルサイト・アラゴナイト）をした炭酸塩鉱物を沈澱させる方法を確立した。
恒温槽を用いて温度を一定にした環境で、炭酸塩鉱物沈澱反応におけるストロンチウムの温度依存性を詳細に調べた結果、ストロンチウムの同位体分別に温度依存性はみられなかった。これは、平衡論的同位体効果の温度依存性を考えた場合、妥当な結果であることがわかった。また、カルサイト・アラゴナイト結晶構造のストロンチウム同位体分別には結晶構造により違いはみられなかった。これは、マグネシウムとカルシウムが結晶構造により同位体分別係数が異なった結果であったことと違った結果となった。
炭酸塩鉱物沈澱反応におけるストロンチウムの同位体分別係数について考察するため、放射光を用いたXAFS法により、合成した試料に含まれるストロンチウムの局所構造解析をおこなった。カルサイトに含まれるストロンチウムとアラゴナイトに含まれるストロンチウムで酸素との結合距離がほとんど同じレベルであることが明らかになった。同位体分別係数は二つの化学種間の結合力の差を反映するため、結合距離に違いがないと同位体分別にも違いはみられないことになり、今回の結果と矛盾しないことがわかった。
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