本課題は、超高精度Nd安定同位体分析法を開発し、地球上の岩石試料および隕石に代表される惑星試料の系統的な分析を行うことで、地球、月および惑星物質間のNd安定同位体組成の変動の様相とその原因を解明しようとするものである。 本年度は、1.Sm安定同位体分析法の開発を行い、また、2.昨年度までに開発した分析法を用いて地球試料・地球外試料のNd安定同位体分析を行った。 希土類元素の化学的性質から、物理化学反応の結果として生じるNd安定同位体組成の変動は、同時にSm安定同位体組成変動も伴うと考えられる。蒸発のような物理化学反応の場合には、安定同位体組成変動は反応量に比例して変化するので、NdとSmの安定同位体組成変動から物理化学反応に伴うSm/Nd比の変化をトレースできる事が期待される。本年度、ダブルスパイクTIMS法によるSm安定同位体分析法の開発を行い、同一試料からNd安定同位体分析とSm安定同位体分析を同時に行うことができる体制が整った。希土類元素の高精度安定同位体分析法について、研究成果の一部をまとめ論文投稿を行った。 昨年度までに基礎データの取得を行った地球試料および、地球外試料に対して、Nd安定同位体分析を行った。火成岩など高温の地球化学プロセスで形成された試料には大きなNd安定同位体組成変動は見られなかったが、炭酸塩岩など低温の地球表層プロセスで形成された試料ではサブ‰オーダーのNd安定同位体組成変動が観測された。月試料を含む地球外試料のNd同位体組成は、火成岩類のそれと明確に異なる分布を示さなかった。
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