研究課題/領域番号 |
25800304
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今寺 賢志 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (90607839)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / ジャイロ運動論 / 乱流輸送 / 輸送障壁 |
研究実績の概要 |
本研究期間において得られた成果は以下の3点である。 (1)大域的トロイダルジャイロ運動論コードGKNET(GyroKinetic Numerical Experiment of Tokamak)を新たに開発した。本コードでは、外部からの熱ソース/シンク、ならびに衝突効果が適切に導入されており、乱流輸送だけではなく、新古典輸送過程を経て形成される径電場も適切に評価することができる。また新規点としては、準中性条件で現れるsingle/double gyro averagingについて、補間関数を用いて計算されたジャイロ軌道上の値を用いて評価しており、Tayler展開やPade近似を用いることなく、有限ラーマー半径効果(FLR)を厳密に取り扱っていることが挙げられる。このことにより、捕捉電子モード(TEM)不安定性など長波長のモードの解析が可能となる。また様々な磁場配位(D-shape, Negative D-shape)も直接的に導入可能であり、任意の座標系(直交座標系、円柱座標系)を用いることができるなど、その利点は多い。 (2)非局所バルーニング理論に基づき、径電場やトロイダル回転がイオン温度勾配(ITG)不安定性に与える影響についてGKNETを用いて解析した。その結果、径電場はバルーニング構造の対称性を回復する方向に作用するため、安定化効果は弱く、場合によっては不安定化させる一方、トロイダル回転はバルーニング角を大きく反転させるため、安定化に寄与することが明らかとなった。 (3)(2)の考察に基づき、GKNETによる熱源駆動型乱流輸送シミュレーションを行い、トロイダル回転による乱流の抑制効果について検証したところ、周辺部に運動量ソースを導入した場合に輸送障壁が形成されることを新たに見出した。これは第一原理に沿った乱流シミュレーションで初めて得られた結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に設定した目標は、(A)新たなFiled solverの実装、(B)熱ソースのパワースキャン、ならびに変調実験による非局所輸送現象の理解、(C)プラズマ遷移現象の再現とその動的制御方法の開拓、の3点であった。 (A)については、上述の(1)で示したように、新たなField solverの開発に成功し、線形、非線型における種々のベンチマークテストからその妥当性を十分に検証した。 (B)については、径方向に伸張した構造が非局所的な乱流輸送に寄与していることを同定し、径電場がその構造形成の過程で重要な役割を担っていることを上述の(2)で示したように線形的に明らかにした。 (C)については、上述の(3)で示したように、運動量ソースを導入した場合に輸送障壁が形成されることを第一原理シミュレーションで初めて見出し、遷移現象の再現とその制御方法として運動量ソースの導入が有効であることを示した。 以上の結果からも、当初の予定通り、順調に研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに開発したField solverの利点としては、前述したように、(a)様々な磁場配位を直接的に導入可能、(b) 捕捉電子モード(TEM)不安定性など長波長のモードの解析が可能、の2点が挙げられる。この2点を軸に今後は以下の研究を推進する。 (a)実配位に近い磁場形状を導入し、磁場形状の楕円度、三角度がITG不安定性や、微視的乱流から2次的に生成される帯状流に与える影響について、GKNETを用いて詳細に調べる。 (b)GKNETにおいてTEM不安定性を取り扱うために、運動論的電子を実装する。一般に運動論的電子を取り扱う場合は、CFL条件が質量比だけ厳しくなることから、時間積分法の改善や、10,000コア以上を用いた大規模計算における良スケーリングの確保を試みる。 これら(a)、(b)を並行して行い、最終的にはITG/TEM不安定性に対する磁場形状の影響、特に負三角度を持った磁場配位の安定化効果について明らかにする。
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