研究課題
若手研究(B)
研究は、核融合科学研究所の開発用水素負イオン源を用いて行った。既存の水素負イオン密度を計測するためのCavity Ringdown(CRD)法で用いているNd:YAGレーザー(1064 nm)の入射光学系からレーザーを分岐して、水素負イオン温度計測用のレーザー入射光学系を構築した。これにより、本研究の条件である、水素負イオン密度と温度を同時計測可能な光学系となった。また、水素負イオン温度計測に、より高いレーザーパルスエネルギーが必要となる。これを実現するために、密度計測系の光検出器をavalanche photodiodeにして検出感度を上げた。これにより、元のレーザーパルスエネルギーの最大95 %以上を温度計測に使用可能となった。なお、温度計測用の検出信号のレーザーパルスエネルギー依存性を調べるために、レーザー光学系上に可変型Beam Attenuator配置した。温度計測のためには光共振器内のレーザー径をなるべく大きくする必要がある。光共振器の安定性を考慮しつつ、大きな曲率半径を持つミラーおよび出口用に平坦な面を持つミラーを選択した。また、光共振器用ミラーには高反射率が必要である一方、温度計測用の光共振器内はにはなるべく多くの光子を入れる必要がある。このために、光共振器入口ミラーには密度計測用光共振器ミラーに比べて低い反射率のものを採用し、出口ミラーには密度計測用と同程度の高い反射率のミラーを採用した。
3: やや遅れている
Nd:YAGレーザーの入射光学系の設計、機器購入、構築を行い、水素負イオン密度計測と同時に水素負イオン温度計測法の開発ができる環境ができた。水素負イオン温度計測用の光共振器ミラーについて、最適なミラーセットを見つけるために、理想的な条件を仮定した計算をした。この結果を元に既製品の中から数種類のミラーを選択し、購入した。しかし、水素負イオン源実験のマシンタイムの都合上、プラズマを用いた実験を遂行する事ができなかった。
本研究最終年度となる2年目は、1年目に構築したレーザー入射光系および水素負イオン温度計測用光共振器ミラーを用いたプラズマ実験を2年目の前半に行う。これにより、初期的な問題を解決するとともに、最適な水素負イオン温度の絶対値の計測精度および空間精度が得られる計測条件を見出す。この計測条件には独自仕様の光共振器ミラーが必要になり、長納期が予想される。2年目後半において、最適な計測条件のもと、水素負イオン温度の評価値と理論予想値を比較し、水素負イオン温度計測値の妥当性を確認すると共に、水素負イオン温度計測法を確立する。
当初、購入を予定していた光共振器用ミラーマウントについて、まずは簡易型を考案し、これを作成した。また、水素負イオン温度計測の光共振器用ミラーについて、計画当初より低価格で販売しているメーカが見つかった。このため、次年度使用額が生じた。次年度使用額分は、研究の進捗に応じて、当初予定していた光共振器用ミラーマウントの購入を予定している。また、特別注文となり高額になる事が予想される、水素負イオン温度計測に最適な光共振器用ミラーの購入にも充てる。翌年度分は当初計画通り、使用予定である。
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Annual Report of National Institute for Fusion Science
巻: April 2012 - March 2013 ページ: 201