研究課題/領域番号 |
25800308
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
廣田 真 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (40432900)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気リコネクション / 爆発的崩壊 / 多階層性 / 電磁流体力学 |
研究概要 |
太陽フレアや地球磁気圏サブストームなど、自然界では爆発的な「磁気リコネクション(磁力線のつなぎ換え)」現象が観測されており、磁場のエネルギーがプラズマの運動エネルギーや熱エネルギーへと急速に変換されている。しかし、電気抵抗による磁場拡散をとり入れただけの古典的な電磁流体力学(MHD)モデルでは、このような「速い」磁気リコネクション速度を理論的・数値的に説明することができていない。そこで、本研究では「電子慣性効果」や「電子温度効果」などの微視的効果を考慮に入れた拡張MHDモデルの直接数値シミュレーションを行い、磁気リコネクションが爆発的に加速される条件やその基本的なメカニズムを調べた。 爆発的な磁気リコネクションは電気抵抗が非常に小さい無衝突プラズマにおいて起こり、シミュレーションではリコネクション領域においてX型の電流シート(境界層)が自発的に形成され、それが衝撃波のように急速に伝搬する様子が見られた。この電流シートの厚みは時間と共に薄くなっていく傾向があり、空間方向に数千から数万個の計算格子を用意することで初めてこのような爆発的時間発展を詳細にとらえることに成功した。また、上記の微視的効果の寄与を小さくする程、初期の線形段階における速度は遅くなるものの、非線形段階における爆発的加速によって最終的には十分速い速度にまで到達することがわかった。 この現象はマルチスケール(異なるスケール階層間の相互作用)をもつことと、強い非線形性をもつことから、厳密な理論解析はこれまで成功しておらず、本研究の高解像度シミュレーションから得られる爆発的時間発展のスケーリング則は新しい理論構築への重要な手がかりになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は高解像度の数値シミュレーションを実施するため、大規模並列計算機の利用を考慮して計算コードの開発を行った。コードは一通り完成してある程度の計算結果が出始めたが、並列化効率が予想以上に悪く、多くの計算時間が必要となってしまった。また、実際にシミュレーションを行うと、パラメータに応じて現象の様子が大きく変わったため、本年度中にそれを説明するほどの完全な理論の構築までには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
さらなるモデルの拡張や高解像度シミュレーションを目指すため、計算コードの最適化や高速化を継続して試みる。それと同時に、数値的に得られた爆発的磁気リコネクションの速度やメカニズムを説明する理論の構築を行い、当初の計画に沿った方向へ研究を遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度1月に論文を投稿し、その投稿料として本年度の予算を残しておいたが、本年度中に掲載確定までには至らなかったため、未使用額が生じた。 上記の論文が現在もまだ審査中であるため、次年度にそちらの掲載が決まれば、当初の予定通り投稿料として使用し、平成26年度の請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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