電子の電気双極子モーメント(電子EDM)は、宇宙の起源の謎を解くCP対称性破れを示す物理量として、その観測に期待が寄せられている。特に分子中の電子EDM観測に近年注目が集まっているが、測定値から電子EDMの値を抽出するためには、相対論的電子状態理論から有効電場という数値を計算することが必須である。本課題では、電子EDMのための相対論的分子理論として、高精度な4成分ディラック法による1,2電子励起結合クラスター法に基づいた有効電場を求める理論・プログラム開発を行った。さらに開発したプログラムを応用して、水銀ハロゲン分子が非常に大きな有効電場を持つことを明らかにし、新たな実験の候補分子を提案した。
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