研究課題/領域番号 |
25810008
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩佐 豪 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特任講師 (80596685)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 近接場光 / 振動分光 / 電子状態計算 / 多重極ハミルトニアン |
研究概要 |
物質近傍に局在する近接場光を利用したナノ光学では双極子近似を超えた理論が必要となる局面が出てくる.例えば基板表面に局在するエバネッセント場を利用した全反射減衰法では原子の四極子応答が報告されており、金属短針表面のプラズモン電場を利用した局所分光では 局在電場の強度勾配に由来する双極子禁制励起も考慮する必要がある.局所的な振動分光は例えば分子膜の局所構造や単分子構造を評価する手法として非常に有用であるが、その解析には局在光の非一様電場と分子振動の相互作用を適切に理解するための新たな理論手法の開発が必要である. 25年度では物質表面近傍に局在する非一様な電場と分子振動の相互作用を多重極ハミルトニアンに基づいて定式化し、電子状態計算で求めた電子密度を利用して振動スペクトルを計算するコードを作成し、双極子電場の近接場成分と相互作用する有機分子の系において一様電場による振動スペクトルとは異なるスペクトルを得た.スペクトルの違いは近接場光の急峻な強度勾配によるものと結論づけた.これにより、実際の近接場光を利用した振動分光の数値シミュレーションが可能になり、実際の実験との直接的な比較も可能となると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
定式化とその確認に時間がかかり、数値計算コードの作成に着手するのが遅れた.25年度の実施計画のうち近接場光による振動励起とその解析は達成できたが、イメージングへの応用計算が未達成であるため、光源の位置を変えて空間分解能を調べる計算を急いで進めている.一方で、表面の効果を取り込むために26年度に着手する予定だったバンド計算プログラムの利用に25年度から着手したためこの点に関してはやや計画を先取りすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
近接場光による分子振動イメージングのために光源の位置を走査した計算を行い、現在得られている成果と併せてまとめると共に、26年度の実施計画にあるように表面上の分子を考え、基板表面の効果を取り込んだより現実的な系において近接場光による分子振動励起の計算を行い、解析を通して近接場光の非一様な電場の役割を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
情報収集に応用物理学会に行く予定だったが折り合いが合わなかったことに加えて、数値計算と解析が間にあわず25年度末に予定していた学会での成果報告に行かなかったため. 数値計算の結果を解析・まとめるために分子振動や電子密度の可視化が必要になるが、それには多くのメモリと処理能力が要求されるため、繰越額の250,000円はより処理能力の高い端末PCに更新する費用に充てることにする.
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