研究概要 |
安定化された有機エレクトロクロミズム系分子の構築を目指し、ドナー・アクセプター型の新規な芳香環集合体の合成と物性評価について検討を行った。 アントラキノジメタンおよびフルオレン骨格を酸化還元的に活性な部分構造とし、さらに酸化還元活性なπ電子系置換基として1-アズレニルおよび2-アズレニルエチニル基を複数個配置した新規なエン-ジインシステムを、パラジウム触媒を用いたアルキニル化反応によりワンポットで合成することに成功した。これらの新規なエン-ジインシステムは電気化学的酸化還元反応により顕著な色調の変化を示し、エレクトロクロミズム分子として機能することを明らかにした(Eur. J. Org. Chem., 2013, 957-964)。 アズレン環の1位、2位、6位にフェロセニルエチニル基の置換した新規なπ電子系化合物を合成し、さらにテトラシアノエチレンとの[2+2]環化付加反応によって、新規なアズレン-フェロセン置換テトラシアノブタジエン(TCBD)をそれぞれ合成した。これらのTCBD誘導体は、サイクリックボルタンメトリー法によりフェロセンに由来する1波の酸化波とTCBDユニットに由来する2波の還元波が観測された (Chem. Eur. J., 2013, 19, 5721-5730.)。 アリールアミン置換した1-エチニルアズレン誘導体とテトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタンとの形式的[2+2]環化付加反応を経て、新規なTCBDおよびジシアノキノジメタン(DCNQ)誘導体を合成した。これらの化合物がUV/Visスペクトルならびに時間依存密度汎関数法(TD-DFT)による計算によって分子内電荷移動吸収(ICT)を示すことを明らかにした。これらの化合物のエレクトロクロミズム挙動を検討した結果、電気化学的還元条件下で顕著な色調の変化を示すことを明らかにした(Eur. J. Org. Chem., 2013, 7785-7799.)。
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