研究実績の概要 |
平成27年度は電気化学的酸化還元の過程において、色調が可逆的に変化する有機エレクトロクロミズム分子の構築を目指し、芳香環集合体の合成とその物性評価を行った。 アズレン環およびフェロセンを様々な芳香環にアルキンを介して連結した新規なπ電子系化合物を合成し、さらにアルキン部とテトラシアノエチレンとの[2+2]環化付加反応によって、ドナー・アクセプター構造を有する新規なテトラシアノブタジエン(TCBD)誘導体の合成に成功した。これら新規なTCBD誘導体の電気化学的挙動をサイクリックボルタンメトリー法により評価した結果、分子内のTCBDユニットの数に比例した多段階の還元波が観測され、連結した芳香環を介したTCBDユニット間の分子内相互作用が示唆された。またTCBD誘導体は、電気化学的酸化還元反応によって可逆的且つ顕著な色調変化を示し、有機エレクトロクロミズム素子としての可能性が示唆された(Chem. Eur. J. 2015, 21, 402-409; Eur. J. Org. Chem. 2015, 1979-1990; Bull. Chem. Soc. Jpn. 2015, 88, 1338-1346; ChemistrySelect, 2016, 1, 49-56)。 また新規な芳香環集合体の合成法として、パラジウム触媒を用いた新規なアリールアズレンならびに1,2’-ビアズレン誘導体の合成法、ならびに環状アミンと6-ブロモアズレン誘導体との芳香族求核置換反応による新規なアミノ化反応を確立した(Heterocycles,2015, 90, 85-88; Org. Biomol. Chem. 2015, 13, 10191-10197; SYNTHESIS, 2016, in press, DOI: 10.1055/s-0035-1561418)。
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