研究課題/領域番号 |
25810023
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
高瀬 雅祥 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (90516121)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸化還元特性 / ドナー・アクセプター / 拡張π電子系 / ピロール / ジラジカル |
研究概要 |
π電子の偏りに由来した分極構造を有するπ電子系は、機能性材料の根幹を担う重要な化合物群である。そこで本研究課題では、特異な分極構造を有する全く新しいπ電子系の設計と合成を行い、その構造―物性相関の解明を目的として研究に取り組んでいる。具体的には、(1)π電子系内にドナ-・アクセプター部位を有する拡張π電子系の構築、(2)ドナー・アクセプター分離型一次元集積体の構築、を合成化学的な目的としている。前者の系において、研究初年度である本年度は、既報の合成ルートを参考に反応性の異なる二つのアルコキシル基を導入したピロール縮環アザコロネンを合成し、脱アルキル化に伴う酸化反応を経て、π骨格中に直接カルボニル基を導入した類縁体を得ることに成功した。その新しいπ電子系の構造は結晶構造解析により明らかにしている。得られた化合物の吸収スペクトルを測定したところ、その吸収末端はおよそ1650nmまで伸びており、また各種スペクトル測定の結果から、安定な電子構造は中性ジラジカルであることが明らかになりつつあり、現在引き続き詳細な物性解明を行っている。一方、後者の系においては、既報のドナー・アクセプター分離型シクロファンの部分構造をモノマーユニットとして用い、本骨格を酸化的にオリゴマー化させることに成功した。その構造的な特徴に関しては、結晶構造解析や温度可変NMRスペクトル等を用いて明らかにしており、DFT計算の結果と併せて、オリゴマー化させることにより、ドナー性とアクセプター性の両方の性質が向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の標的分子と考えていた、π骨格に直接カルボニル基を導入したピロール縮環アザコロネンの合成に成功し、当初の予想とは異なった中性ジラジカル性と言った興味深い性質が明らかになりつつある。一方、電荷分離型一次元集積体に関しても、既報の骨格を単純化したユニットのオリゴマー化に成功し、各種基礎物性評価により、オリゴマー化に伴う特徴的な物性発現の観測に成功している。そのため、おおむね二年間の研究計画に沿った研究の進展が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
π骨格に直接カルボニル基を導入したピロール縮環アザコロネンの中性ジラジカル種に関して、磁化特性の温度依存性などの詳細な物性解明を行うと共に、カルボニル基の位置・数を変えたπ電子系、更なる誘導化を施した分子群の合成にも取り組み、その構造―物性相関の解明に取り組む予定である。一方、ドナー・アクセプター分離型一次元集積体については、現状の分子ではアクセプター平面間の重なりがそれほど大きくないことが判明したため、導入するアクセプター分子の再検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究初年度に購入を計画していた分光電気化学用セルやマグネティックスターラーなどの物品を本年度中に購入する必要がなくなったため、当初の予定より使用額が低くなった。 昨年度に引き続き、有機合成実験に必要な試薬・ガラス器具等の物品費として主に使用する。さらに、本年度中に得られた成果を元に論文・学会発表を行うため、国内外の学会参加のための参加登録費・旅費としても昨年度以上の予算を計上する予定である。
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