研究課題/領域番号 |
25810026
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
有井 秀和 学習院大学, 理学部, 助教 (80384733)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高周期14族元素 / 低原子価化学種 / 7員環歪み |
研究概要 |
本研究では、孤立電子対と空のp軌道を併せ持つ高周期14族元素2化学種の構造ならびに反応性に着目し、7員環キレート歪みの導入により反応性がどのように変化するのかを明らかにすることを目的としている。7員環キレートを導入するために、2,2’-ジアミノビフェニル骨格を選択し、6,6’位にはビフェニルの回転を抑制するためにメチル基を、窒素上には高周期14族元素2価化学種の速度論的安定化のためにトリメチルシリル基を置換したものを用いた。その結果、ゲルマニウムとスズでは2価化学種の単離に成功し、X線結晶構造解析に成功した。また、ケイ素は2価化学種を合成するための前駆体である4価化学種のジクロロ体の合成に成功している。 不飽和結合化合物との反応についても実験を進めており、ゲルマニウム2価化学種では種々のα,β-不飽和カルボニル化合物との反応を行うと[4+1]付加環化反応が進行し、5員環化合物が生成した。構造はX線結晶構造解析により決定し、NMRでの反応追跡により高い立体選択性でこの付加環化反応が進行していることが分かった。これらのことは2013年7月にカナダのノバスコシア州バデックで行われた14th International Conference on the Coordination and Organometallic Chemistry of Germanium, Tin and Leadで発表した。ゲルマニウムで得られた実験をもとに、スズ2価化学種でも同様の実験を行った。ベンズアルデヒドならびにシンナムアルデヒドとの反応を試みたが、部分的には反応が進行しているもののスズ2価化学種の分解物が多く見られた。このことはスズ2価化学種がゲルマニウムと比べて不安定であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の研究計画では、2,2’-ジアミノ-6,6’-ジメチルビフェニル誘導体を用い7員環歪みを導入した高周期14族元素2価化学種の合成に力点をおいて研究を進める予定であった。ゲルマニウムとスズの2価化学種に関しては合成に成功し、X線結晶構造解析ならびにNMRなどの分光学的測定によりその性質を明らかにした。ケイ素2価化学種の合成にはまだ至っていないが、前駆体である4価化学種のジクロロ体の合成に成功している。この進捗の差はそれぞれの元素の2価化学種の安定性に起因しており、ゲルマニウムやスズの2価化学種は塩化物として合成できるが、ケイ素の類縁体は合成が困難であり、4価化学種を二電子還元する必要があるためである。 合成に成功したゲルマニウムやスズの2価化学種に関しては進捗状況が良好であったために、26年度に予定していた不飽和結合化合物との反応を25年度に行うことができた。ゲルマニウム2価化学種に関しては種々のα,β-不飽和カルボニル化合物と反応し、[4+1]付加環化体が生成した。またこれらゲルマニウムの研究成果を国際会議で発表することができた。一方、スズの2価化学種はアルデヒドやα,β-不飽和カルボニル化合物との反応において分解する傾向が見られ、やや不安定であることが分かった。スズ2価化学種の不安定さに関しては、その事実が早く明らかになったために、26年度の研究において問題解決するための対策を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の研究計画では、高周期14族元素2価化学種と不飽和結合化合物との反応を行う予定であった。研究実績の概要と達成度で述べたようにゲルマニウムとスズの2価化学種に関しては25年度に実験を前倒しして進めており、一定の成果を上げることができた。その際、問題点として浮上したのがスズ2価化学種の不安定さであった。これについては窒素上の置換基を嵩高くすることで改善できるのではないかと考えている。現在、窒素上にはトリメチルシリル基を置換しているが、より嵩高いt-ブチルジメチルシリル基を導入したものを合成する予定である。またトリアルキルシリル基以外に、フェニル基やシクロペンチル基などのアルキル基の導入も検討している。これは分解の要因の一つとしてケイ素-窒素結合の開裂があることが考えられるため、その要因を取り除くためである。また、ゲルマニウムの化合物に関してはスズやケイ素の類縁体の合成や反応において良い指針となるために、今後も合成や反応に用いていく予定である。 ケイ素の2価化学種の合成であるが、現在前駆体のジクロロ体の還元を各種還元剤(アルカリ金属やカリウムグラファイトなど)で検討しているが、良好な結果が得られていない。これはケイ素-塩素結合の強さに起因しているため、還元を受けにくいことが考えられる。そこでジブロモ体を前駆体として合成して還元を試みる予定である。また、還元の際に窒素上のトリメチルシリル基がケイ素2価化学種上に転位する可能性もあるため、スズの場合と同様にアルキル基を置換した2,2’-ジアミノ-6,6’-ジメチルビフェニル誘導体を持つものも合成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画段階では低温で反応を行うための恒温槽を購入予定であったが、ゲルマニウム及びスズの合成が予定通り進んだので、購入を見送ったためにその差額分を次年度に繰り越すことになったためである。 26年度は合成の結果問題点が明らかになったスズ2価化学種と、前駆体まで合成できたケイ素2価化学種の還元を中心に行っていく予定である。そのため合成に必要な薬品や器具類に主に予算を使用していく予定である。薬品は重溶媒など代替のきかない高価な薬品も多いため、支出は妥当であると考えられる。
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