研究課題/領域番号 |
25810029
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鈴木 克規 中央大学, 理工学部, 助教 (60455350)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 有機典型元素 / 有機ホウ素 / ボラベンゼン / 共役系 / 機能性材料 |
研究概要 |
パイ共役系分子はその共役系骨格に由来する電子物性から有機発光材料や有機トランジスタ材料などへの応用が期待されており、活発に研究が行われている。共役系の拡張した分子はバンドギャップの減少に伴い、可視領域吸収帯の拡張や発光特性、半導体特性の向上など有機エレクトロニクス材料として優れた物性を有する。その反面、複雑で多段階の合成反応が必要となり、低収率化や高コスト化が避けられない。共役系化合物の簡便で高効率な合成法の開発は、今後の有機エレクトロニクス材料の飛躍的な発展に向けて重要な課題である。またこの共役系分子にホウ素と窒素を導入することで炭素類縁体とはことなる興味深い物性が発現することが近年注目されている。そこで本研究ではボラベンゼンとピリジンの錯形成について着目し、これを用いた簡便な共役系骨格の連結法と得られた新奇なB-N含有共役系の物性評価を目的とする。 この目的を達成するため、初年度にはボラベンゼン-ルイス塩基錯体を鍵中間体とした合成法の開発を計画していた。その計画通りに研究を行った。まず鍵中間体となるボラベンゼン-ルイス塩基錯体を合成するため、ボラベンゼン前駆体とピリジン類、2-フェニルピリジン、2,2’-ビピリジルとの錯形成を検討した。その結果として、ボラベンゼンのホウ素とピリジン類の窒素が錯形成し、共役系が連結できることを分光学的手法により確認した。このボラベンゼンと2-フェニルピリジン、2,2’ビピリジル錯体を用いた酸化的環化反応について検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究計画として、ボラベンゼン-ルイス塩基錯体を鍵中間体とした合成法の開発を達成する予定であった。この計画における合成反応は二段階に分けられる。最初の段階としてボラベンゼン-ルイス塩基錯体の合成があり、次の段階としてその酸化的環化反応を計画している。この計画に従い、合成法について種々の検討を行った。その結果として鍵中間体となるボラベンゼンとピリジン類、2-フェニルピリジン、2,2’-ビピリジル等との錯形成に成功している。すなわち最初の段階であるボラベンゼン-ルイス塩基錯体の合成については達成した。次の段階としてこの酸化的環化反応の確立があげられる。この合成反応についても種々の基質および反応条件検討を行った。前駆体に対して、種々の酸化剤、溶媒を加えた環化反応に加えて、光反応による環化を経た酸化的環化反応についても検討を行ったが、初年度を終了した段階でこの合成法の確立には至っていない。初年度の計画では酸化的環化反応の条件の確立までを行うこととしていたが、現在も反応条件の検討を継続して行っており、計画に若干の遅れが見られている。しかし、その前駆体の合成および確認は行われていること、また様々な基質について検討を行った結果として得られた合成化学的な知見も集積されつつあることから、今後も合成法の確立に向けた検討を継続して行っていくことでこの反応条件の確立がなされるものと考えている。従って研究計画はやや遅れているものの支障はきたさない。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の研究状況として、最初の研究計画であるボラベンゼン-ルイス塩基錯体を鍵中間体とした合成法の開発について検討を行っている段階である。この過程で前駆体ボラベンゼン-ルイス塩基錯体の合成は行っており、次の酸化的環化反応について研究を行っている。この合成法の確立が現在の課題である。計画書に記載したように初年度の段階でこの合成法を確立することはできなかったが、これまでの検討から合成反応に対する知見が集積されつつある。この知見をもとに合成検討を継続することでこの反応の確立が可能であると考えられるため、今後m検討を行っていく方策である。またこの反応において前駆体の電子状態について密度汎関数法をもちいた理論的な考察も行っている。その電子状態の解析から反応に適した基質および反応条件の探索も実験化学的な検討と合わせて行っており、この知見を実験にフィードバックすることで合成反応の確立を効果的に進める予定である。 計画の次の段階として確立した合成法をより拡張したホウ素、窒素含有共役系の合成へと応用する予定である。合成法の確立の後にこの段階へと研究を展開する予定であるが、これまでの合成法の検討において、前駆体の合成は予備的に行っている。従って合成法の確立がなされ次第、すみやかにこの段階へと研究を展開する手筈は整っている。 得られた共役系化合物の物性評価についても準備は整っており、すみやかに遂行できると考えられる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
3月分の物品費、おもに試薬、ガラス器具、反応溶媒のための予算として確保していたが、消耗品費を正確に予想することが困難であり、実際に使用した額が予想を下回ったため翌年度に繰り越すこととした。 次年度の物品費に合算して使用する計画である。
|