研究実績の概要 |
本研究では炭素をテンプレートとする貨幣金属クラスターとして、金(I)錯体を用いた有機金属クラスターの合成を目指す。本年度は主に金(I)の芳香族化合物への配列について、特に1,2-金(I)二置換ベンゼンの合成について検討を行った。 アリールホウ酸、およびホウ酸エステル誘導体と金(I)ホスフィン錯体との金属交換反応によりアリール金(I)化合物が生成することが知られている。1,2-ホウ酸エステル二置換ベンゼンを出発原料とし、種々のホスフィン配位子を有する金(I)ホスフィン錯体との金属交換反応を試みた。その結果、ホスフィン配位子上の置換基を適切に選択することにより、1,2-金(I)二置換ベンゼンの合成に成功し、各種NMR測定および単結晶X線結晶構造解析よりその生成を確認した。これまでにオルト二置換アリール金(I)化合物を合成する一般性の高い手法は開発されておらず。芳香環に自在に金を配列する手法になると期待される。 また、効率的な1,2-金(I)二置換ベンゼンの形成を期待し、ビス(ホスフィン金(I))化合物を用いたところ、配位子により二つの1,2-金(I)二置換ベンゼンが架橋された環状型四核錯体が形成することを見出し、単結晶X線結晶構造解析より固体中における構造を明らかとした。 さらに、1,2-金(I)二置換ベンゼンへ金(I)錯体を添加すると金(I)錯体が付加反応を起こすことがNMRおよび質量分析より示唆された。このことは、本研究で開発した1,2-金(I)二置換ベンゼンが貨幣金属集積のテンプレートとなることを示唆している。
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