研究概要 |
ZrCuSiAs型LaZnAsO中の酸素サイトへの水素陰イオンH-置換およびZnサイトへのMn置換を試みた。本実験は水素置換によって導入される伝導電子とMn間の相互作用に基づく電子・磁気機能発現を目的としている。試料合成にはベルト型超高圧装置を用いた。従来のZrCuSiAs型水素化物の合成例を参考にして、合成条件は1100℃, 2GPa、加熱保持時間30分とした。La2O3, LaAs, LaH2, Zn3As2, Zn2AsおよびMn3As2を出発原料として混合し、反応させることで、LaZnAsO、LaZnAsO0.9H0.1およびLaZn0.9Mn0.1AsO0.9H0.1の合成に成功した。水素置換試料では、NaBH4およびCa(OH)2を水素源として用いることで高圧水素雰囲気下で合成を行ったが、粉末X線回折測定の結果、原料が還元されて分解するといった事象は起こらず、ZrCuSiAs型の結晶相が安定に存在することが確かめられた。合成されたLaZnAsOは室温で1 M Ω・cm以上の高い抵抗率を示し、伝導電子や正孔を供給する欠陥の生成が高圧合成法では抑制されていることが示された。一方、水素置換を行った試料では2 k Ω・cm程度までの抵抗の低下がみられ、電気伝導度の温度依存性から、その活性化エネルギーは0.4eV程度と見積もられた。Mn共置換試料でも同程度の電気抵抗がみられた。現在のところMn置換による強磁性等への変化はみられていない。
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