研究課題/領域番号 |
25810035
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松石 聡 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 准教授 (30452006)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素アニオン / 層状化合物 / 電子ドーピング / 金属絶縁体転移 / 混合アニオン化合物 |
研究実績の概要 |
昨年度までに引き続き、電子ドーピング系における希薄磁性の発現を目指し、ZrCuSiAs構造を持つLaZnAsOに対し、酸素サイトの水素置換およびZnサイトへのMn置換を同時に行うを共置換を行った。初年度から昨年度の前半は、高圧合成の条件の最適化を行い、1300℃ 5GPaの条件で合成すると、水素置換により電気抵抗が低下することを確認した。しかしながら、その置換量の上限は20%程度であった。一方、昨年度後半の研究によりはMnとHが1:1の割合になるように共置換した場合は置換量が30%を超えても相が安定することが判明したので、本年度はこの共置換系の磁気的性質の測定を続けた。Mn置換により、100K以下にごく弱い磁化率のピークを示す試料も合成できたものの、置換量に対する依存性は明瞭でなく、期待していたような強磁性発現および磁気抵抗は観測することができなかった。したがって、水素-Mn共置換による磁性の発現を狙った研究の継続は断念することとした。当初計画では、この事態を想定し、すでに強磁性発現が確認されているLaMnAsO1-xHx系の物性測定を行うこととしており、現在、LaMnAsO1-xHxの合成と絶縁体-金属転移に伴う光学応答・磁気応答の変化を測定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
水素置換の確認、強磁性の発現の有無の確認に当初予定よりも大幅に時間を費やしてしまった上、期待した物性も出ない状況になっている。既存のLaTMAsO1-xHx系(TMは3d遷移金属)のTM置換体であり比較的に容易に合成できると考えていたが、合成条件の確立には予想以上の実験回数が必要であった。研究代表者一名のみの実験ではこなせる合成回数が限られていたのが本質的原因であり、また、当初期待した機能発現にこだわってしまったのが遅延の理由だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の遅れを取り返すために、研究期間を一年延長する。対象物質は合成がしやすいLaMnAsO1-xHxに固定し、その光・磁気特性の評価をおこなう。過去の論文では2GPaの条件で最大70%程度(x=0.7)の試料が得られているが、本研究の結果から、より高圧の5GPa程度で合成すると高い水素置換量が実現できることが示されており、水素置換量の上昇により強磁性転移温度の上昇が期待できる。水素置換量を変化させたうえで、絶縁体から金属に転移する過程でどのように光学応答・磁気応答が変化するかを測定し、LaMnAsO1-xHx系の反強磁性絶縁体・強磁性金属転移の機構について、密度汎関数法による電子状態計算の結果と合わせて論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりも研究が大幅に遅れており、実験用消耗品以外の学会参加費や旅費の支出がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の試料合成のための試料容器材料の購入および学会参加費に充てる。
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