研究課題
若手研究(B)
高効率な光増感作用と強発光性を示す金属錯体の創製を目指して、配位子間に強固な芳香環相互作用を働かせたレニウム錯体を設計・合成し、その物性評価を行った。レニウムジイミン錯体を二座ホスフィン配位子を用いて連結し、構造規制を施した、環状レニウム多核錯体を種々合成した。その吸収・発光特性は、その核数や架橋鎖の長さに大きく依存した。例えば、吸収・発光極大のシフト量は環構造のサイズ、剛直性と相関が見られた。また、環骨格の小さい錯体は高い発光量子収率を示し、40%を超える強発光性レニウム錯体の合成に成功した。さらにこの錯体は5μsを超える励起寿命を有することがわかり、光増感剤として有利な光物性を有することがわかった。長寿命な励起状態を有するこの錯体を光増感剤、配位活性なレニウム単核錯体を触媒として、犠牲還元剤存在下、可視光を照射して二酸化炭素還元光触媒反応を行った。その結果、犠牲還元剤の約9割が消費されるまで順調に光触媒反応が進行し、また反応条件を最適化することで、その反応量子収率は82%に達した。この収率はこれまで報告されている二酸化炭素還元光触媒の中で最も高い数値である。光触媒反応中における変化を紫外可視分光法によって追跡したところ、光触媒反応中で光増感剤が触媒錯体に効率よく電子を渡し、触媒として働いている錯体が分解するまでの間安定に存在し続け、光増感剤として機能していることが明らかになった。このことは、今回開発した光増感剤が好ましい光物性を持っているだけでなく、高い安定性も持ち合わせていることを明確に示している。
2: おおむね順調に進展している
配位子間芳香環相互作用を利用して、計画通りに金属錯体の強発光化と、高効率で安定的な光増感作用を実現したため。
配位子間に芳香環相互作用を働かせるという独自の物性変調法を他の金属錯体にも拡張し、さらに高効率な光増感作用を示す金属錯体の開発を進める。
調達方法を工夫して、計画当初予定していた液体試料分析装置を購入し、経費の使用が節約できたため。次年度の研究計画では多くの新規化合物を合成する予定であるため、それを効率的に遂行するための合成機器・器具の購入に充てる。
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