研究課題
最終年度において、配位子間相互作用を利用した新たな発光性金属錯体の開発を目指して、正四面体型構造を有する新規銅(I)錯体の合成に取り組んだ。平面配位子間の相互作用が期待されるフェナントロリンとフェニルピリジン2個を配位子とする銅(I)錯体の合成を試みたところ、それぞれの配位子が1個ずつ配位した錯体が得られることがわかった。同様の生成物は相互作用の程度が異なるフェニルイミダゾールを用いた場合にも得られた。しかしながら、当初予定していた2カ所の配位子間相互作用を持つ銅(I)錯体は生成せず、発光性の誘起が困難であることが明らかになった。さらに、これらの1カ所のみ配位子間相互作用を有する銅(I)錯体は空気中では不安定で、容易に酸化され、フェナントロリンと銅イオンをそれぞれ4個有する銅(II)四核錯体が生成することが、X線結晶構造解析から明らかになった。本研究を通じて、発光性および二酸化炭素還元光触媒能を有するレニウム(I)錯体を環状に連結したレニウム多核錯体が、その核数や連結様式を種々変化させることで、錯体内の配位子間相互作用に由来する高効率な光増感特性だけでなく強発光性や多電子蓄積能を示すことを明らかにした。特に、最も長い励起寿命を有する環状多核錯体を光増感剤として用いる二酸化炭素還元光触媒反応を検討し、これまでに報告されている中で最も高い反応量子収率を示す光触媒系を実現した。また、環状多核錯体は光触媒反応中において、触媒となる錯体が存在する間は安定に存在し、電子をその触媒に効率よく渡し、その結果として効率的な光増感作用を示すこともわかった。さらに、配位子間相互作用に基づく正四面体型銅(I)錯体の合成に新たに挑戦した。平面配位子間の芳香環相互作用を有する錯体が得られた一方で、十分な発光性を示す安定な銅錯体を得るには至らなかった。
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