研究課題/領域番号 |
25810037
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
三宅 亮介 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 助教 (30509542)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 結晶間構造変換 / ペプチド環状錯体 / 結晶ナノ空間 |
研究概要 |
本研究で基本モチーフとしているジペプチド環状錯体は、水やアニオンの良い集積場となる結晶ナノ空間を有している。また、これらの結晶ナノ空間は、水分子などのゲストの吸脱着により構造変換可能な柔軟な骨格を持つ。今年度は、これらの構造変換特性を利用した機能展開に向け、ジペプチド環状錯体結晶のナノ空間におけるゲスト包接や構造変換特性の基礎的知見の獲得を目指して研究を行った。対アニオン種や結晶パッキング構造間の比較を行うことで、配位子交換などの大きな構造変換の実現に必要な設計について調べた。まず、空間の開閉を伴う大きな構造変換が期待できる配位子交換を伴う構造変換の基礎的知見および、設計指針の獲得を行った。熱力学パラメーターの比較と詳細な結晶構造解析から、配位子交換には、構造変換に適した結晶パッキングを有することに加え、対アニオンの配位性や形状が影響を及ぼしていることを明らかにした。また、粉末X線回折とIRスペクトルによる構造変換過程の追跡を行い、配位子交換が環状骨格にある4つの金属中心で協同的におきていることを明らかにした(Inorg. Chem.に発表)。これらの知見は、構造変換に基づくスイッチング機能創製に向けて重要であると考える。また、空間内の水―アニオン配列やゲスト包接選択性についても、対アニオンや結晶パッキング構造との関係を明らかにした。 初年度は、合わせて新規ペプチド錯体の創製も行い、天然のアミノ酸を導入した環状ペプチド錯体結晶の合成にも成功した。また、新たに合成したペプチド配位子による金属イオンの集積化にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた基礎的知見の獲得と新規ペプチド環状錯体結晶の創製は、順調に進んでおり、今年度中に論文にまとめられる予定である。構造変換に同期した伝導度やゲスト包接の検討は当初の予定ほど進んでいないが、検討に必要な測定系の準備は予定より早く完了しており問題ない。また、新規ペプチド環状錯体結晶の創製については、順調に進んでいる。特に、新たに合成したペプチド配位子の中に、金属イオンの2次元集積に適したものが見つかるなど、新たな研究展開も期待できる状況にあり、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、構造変換による結晶ナノ空間の物性スイッチングシステムの構築及びにその評価を行う。構造変換によるゲスト包接の変化を観測する測定系の構築は、昨年度に完了しており、スムーズに2カ年目の計画を遂行できると考えられる。新たに研究室に配属された4年生1名にも本研究に協力してもらうことで、研究推進のスピードを改善する。また、本研究の過程で発見したペプチド配位子による金属イオン集積についても、配列を制御することで物性制御への展開を検討する。
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