Eu(III)錯体の誘起円偏光発光を用いたキラルセンシングシステムにおいて、Eu(III)錯体の配位子依存性を検証した。フェナントロリン誘導体を配位子として用いた時に、ビピリジン誘導遺体のときに比べて著しい感度の増大が検出された。また、このフェナントロリン錯体を用いたセンシングシステムについて、対象分子(アミノ酸12種)、キラル分子の濃度依存性、pH依存性などを検証した結果、アルギニン、ヒスチジンを用いたときに2個以上のアミノ酸分子がEu錯体と相互作用する、すなわちアロステリックな形で作用することで円偏光発光を誘起することが明らかとなった。 前年に開発した赤外領域まで検出可能な円偏光発光装置を用いて、Yb(III)錯体を用いたキラルセンシングシステムについて検証した。その結果、中心金属によってもキラルセンシング能が影響を受けることが明らかとなった。すなわち、上述のEu(III)錯体のときに用いたものと同じフェナントロリン誘導体配位子を用いたとき、ヒスチジンのキラリティを検知したが、アルギニンは検知しなかった。 赤外円偏光発光分光装置が完成したことで、検証できる金属種や配位子、励起光の選択幅が大幅に増えた。今後とも関連する研究を展開していく予定である。
|