研究実績の概要 |
金属イオンと架橋配位子が自己集積してできる多孔性配位高分子(MOF)を固体表面上に固定化する手法は、多種多様な機能を集積化した新材料として、センサー・触媒等への応用が期待されている物質群である。この観点から、基板上における機能の集積化に適したMOFナノ薄膜の開発は重要であり、1層ごとに構成要素を変えて積層することができれば多様な構造設計を行えるようになる。申請者は、多彩な物性、およびゲスト分子能を有するHofmann型MOFを基盤材料として、一層ごとの薄膜成長の制御に優れるLayer-by-layerを用いたヘテロ接合型MOFナノ薄膜の作成、およびそれらの電子状態や物性について明らかにすることを目的とする。 初年度(H25年度)は二次元層状Hofmann型MOFのFe(py)2[Pt(CN)4] (py: ピリジン)の結晶配向性薄膜の作成に成功し、バルク状態では見られない特異なゲートオープン型の吸着挙動を見出すことに成功したが、三次元Hofmann型MOFであるFe(pz)[M(CN)4] (pz: ピラジン, M: Pt, Pd, Ni)を基盤としたヘテロ接合型のMOF薄膜の作成には至らなかった。 最終年度であるH26年度は、当初目的としていたヘテロ接合型MOF薄膜の作成に注力した。種々の組み合わせを検討した結果、Fe(pz)[Ni(CN)4]薄膜の上にFe(pz)[Pt(CN)4]を成長させたヘテロ接合型のMOF薄膜の作成に成功した。薄膜X線回折から結晶配向性が明らかになり、ヘテロ接合特有の挙動であるFe(pz)[Pt(CN)4]薄膜の格子定数の減少が確認された。さらにはヘテロ接合によりFe(pz)[Pt(CN)4]側のスピンクロスオーバー挙動が大きく変化することも明らかとなった。この結果は近日中に論文投稿予定である。
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