研究課題/領域番号 |
25810042
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 幸正 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50631769)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水素生成反応 / コバルト錯体 / ニッケル錯体 / 水の可視光分解 / 分子触媒 / 触媒反応機構 / N-ヘテロ環状カルベン / メチルビオローゲン |
研究概要 |
本研究課題では、高い触媒活性と耐久性を併せ持つ水素生成触媒の創出とその触媒反応機構の解明を目指している。その中で、研究代表者らのグループではEDTA/[Ru(bpy)3]2+/MV2+(メチルビオローゲン)/水素生成触媒からなる光化学系(三成分系)では、種々の白金(II)錯体が均一系触媒として高い活性を示すことを報告してきた。この系は、pH 5において、水素生成に対し150 meVという小さな駆動力しか持たず、未だ第一遷移金属からなる錯体触媒による水素生成反応の報告例は無い。本年度は、近年水素生成触媒としての研究が活発に行われているコバルト錯体に着目し、三成分系で活性を示す錯体触媒の開発を目指した。そこで今回、我々は大環状コバルトカルベン錯体を合成し、その水素生成触媒機能を評価した。本錯体はN-ヘテロ環状カルベン(NHC)による強固な結合、並びに大環状構造が持つキレート効果により、高い触媒耐久性を示すと期待される。錯体の合成は、過去に報告されている同様の環状配位子を有するニッケル錯体の合成と類似の方法にて行い、得られた粗生成物を塩酸中で再結晶することにより純粋な試料を得た。三成分系における水素生成触媒の機能評価は、EDTA(30 mM)、[Ru(bpy)3]2+(0.04 mM)、MV2+(2.0 mM)、及び錯体1(0.1 mM)をpH 5の酢酸緩衝溶液 (0.1 M)に溶解し、Ar雰囲気下で可視光を照射することにより行った。その結果、光化学的な水素生成反応の進行が確認され、8時間後の触媒回転数(TON)は10.2に達した。また、電気化学的に調製したメチルビオローゲンカチオンラジカルと、本錯体触媒をグローブボックス下、水溶液中で混合しその後に進行する水素生成反応を観測したところ、42時間の測定でその触媒回転数が16.8回に達することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度に合成並びに機能評価を行った、コバルト錯体触媒については研究計画当初は予測していなかったほどの高い触媒活性を示した。これらの理由から研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当該年度に開発したコバルト錯体触媒の各種置換基効果や触媒反応機構の解明に取り組む。また、水素生成反応を促進するニッケル錯体触媒の開発も進める。
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