研究課題/領域番号 |
25810044
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本林 健太 北海道大学, 触媒化学研究センター, 助教 (60609600)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電気化学 / 表面科学 / イオン液体 / 電気二重層 / 溶媒和構造 |
研究実績の概要 |
本年度は、イオン液体|金属電極界面における、水分子やLiイオンの溶存状態、及びそれら溶存種が与えるイオン液体の界面構造の電位応答に対する影響について、研究を行った。1-butyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsurfonyl)amideを中心としたいくつかのイオン液体に対して、金薄膜電極の電位、水やLiイオンの濃度を制御しながら、表面増強赤外吸収分光測定を行った。低濃度の水分子は、一般にイオン液体中水分子同士の水素結合ネットワークから切り離され、アニオンに囲まれて孤立した状態をとることがわかっている。一方電極界面においては、アニオンと強く相互作用しつつ、水分子同士の水素結合ネットワークも形成されていることがわかった。また、アニオンが電極電位に対応して吸着・脱離するのと呼応して、界面近傍の水分濃度が変化することもわかった。電気化学デバイスへの応用に当たって重要な知見である。一方Liイオンは、イオン液体中で2つのアニオンが配位した錯構造を形成していると考えられる。電極界面での電位応答を調べたところ、負電位側ではLi錯イオン、アニオン共に表面濃度が減少、正電位側ではアニオン濃度が減少する一方Li錯イオン濃度が増加した。錯構造は負に帯電しているため、負電位で表面濃度が減少したと考えられる。また正電位側でアニオンよりも錯構造が界面近傍で安定化することから、この錯構造の電荷が2以上である、つまりアニオンが3つ以上配位した構造である可能性が示唆された。現在その構造の詳細について、理論化学計算等を用いた検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時点の計画にある有機化合物の酸化還元反応の研究などには着手できていないが、その分、本研究の目的達成への寄与が大きい水やLiイオンの溶媒和構造の解明を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、イオン液体|電極界面で起こる電気化学反応の直接観測によるメカニズム解明を試みる。当初計画で挙げた反応に留まらず、Liイオンや他の金属種の酸化還元反応などにも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったグローブボックスを自主制作としたことによって生じたものである
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次年度使用額の使用計画 |
自作グローブボックスに関わる消耗品や、実験計画の追加に伴って必要となる薬品(イオン液体やリチウム化合物など)に使用する予定である。
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