研究課題/領域番号 |
25810046
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤田 知久 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70625467)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 配位結合 / ペプチド / 単結晶 / フォールディング / 自己組織化 / 分子認識 |
研究概要 |
本研究では、柔軟なペプチド鎖に対して金属イオンを配位させ、人工的に「折れ畳むこと(フォールディング)」と「3次元的に精密に配置すること(アセンブリー)」を同時に行うことで、ペプチドを基盤とする新規自己組織化ナノ材料の創出を目指している。特に、ペプチドヘリックスに囲まれた人工ナノ空間を作り上げることを目的としている。 初年度の研究では、天然のコラーゲンに見られるペプチド配列(グリシン-プロリンープロリン)の3残基のペプチド配列の両末端に金属配位部位を施したペプチド配位子を合成し、様々な金属イオンとの結晶化を検討した。その結果、水アルコール混合溶媒中で、銀イオンを添加する条件で、単結晶が得られることを見出した。 得られた単結晶をX線構造解析したところ、ペプチド鎖がポリプロリンII型らせんにフォールディングされた形状で3次元的にネットワーク化された分子構造であると確認された。また、この結晶材料は、ペプチドのらせんが絡み合う隙間として、直径2ナノメートルにおよぶ巨大な1次元チャネル構造が形成していることも明らかとなった。このようにペプチドヘリックスと金属イオンにより構築された人工の単結晶材料は前例がなく、さらに巨大なナノ空間も併せ持つ、独創的な新材料の創出を実現したと言える。得られた単結晶材料のもつナノ空間は、大きさのみならず、ペプチドのらせん構造に基づく不斉空間であり、特異な分子認識が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である、配位結合を駆動力として、ペプチドフォールディングとアセンブリーを同時に行うことで単結晶性の分子構造を作ることを達成できた。このようなコンセプトによるものづくりは前例がなく、新材料を創出したと言える。また、そのコンセプトを実現できただけでなく、得られた単結晶材料には、巨大な不斉ナノ空間も形成したため、この特長を活かした生体関連分子の分子認識へと研究を展開することが大いに期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究で創出した単結晶材料のもつ、ペプチドヘリックスに囲まれた2ナノメートル径の不斉ナノ空間を活かした分子認識を開拓する。まずは、イオンや有機分子の認識が可能であると考えられる。また、キラルな有機分子の不斉認識も検討する。さらに、この結晶材料は、水アルコール系の高極性の溶媒から作られることも考慮すると、ペプチドやオリゴ糖、核酸などの生体高分子の認識といった非常に難易度の高い分子認識へも挑戦する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画よりも新材料の合成が順調であったため、物品費の支出がやや抑えられたため。 得られた成果を発表するための論文投稿費や学会参加費(旅費)に使用予定。
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