本研究課題は、フェノール・フェノキシル間の水素結合において発現すると予想されるプロトン共役電子移動(PCET)反応を固体中における電子伝達の動作原理へと応用することを目指したものである。そのためにはPCET反応活性となるユニット同士を固体中に並べて、それらを相互作用させる必要がある。そこで水素結合とπスタックを組み合わせて低分子を一次元鎖状に並べたもの、また二つの水素結合部位をもつ分子を合成してそれを繋ぎ合わせて一次元鎖構造としたものの二種類を合成した。前者からは水素結合部においてプロトンと電子の交換が観測され、それらが固体全体にわたり発現していることが明らかとなった。
|