研究課題
自己集合を、分子から分子集合体を構築するための「ボトムアップツール」から、分子構造情報を分子集合体に変換する「変換ツール」と捉え直すことで、従来の1:1結合(分子認識)に基づく蛍光センシングとは検出メカニズムが異なる、自己集合過程を利用する蛍光センシング系の構築に取り組んだ。これまでに、発蛍光部位に会合誘起発光特性を示すテトラフェニルエテンを用いた会合誘起型蛍光センサ(TPE)を開発し、ゲスト分子に対する蛍光応答に閾値を持ったturn-on型の蛍光検出を提示してきた。本年度は、自己集合の「変換ツール」としての側面に焦点を絞り、π-スタック構造を形成して初めて蛍光を発する、オリコフェニレンビニレンを用いた蛍光センサ(OPV)を開発した。ジカルボン酸類に対する蛍光応答挙動を調査した結果、ジカルボン酸構造に依存した、閾値・蛍光強度・蛍光波長を与えることを見出した。本結果は、自己集合過程を経たゲスト分子情報の精密変換とみなすことができるもので、自己集合を利用する新たな分子認識コンセプトの提示に至った。自己集合の情報変換機能が明らかとなったので、次に、実用的な蛍光センシング系の構築に向け、turn-on特性・selectivity・detection rangeを制御するための方法論を開拓した。測定系中に塩を添加することで、ゲスト選択性が向上し、且つ、測定レンジが高濃度側に拡大することを見出した。本結果は、自己集合過程をコントロールすることで得られたものであり、この知見を蛍光センサデザインにフィードバックすることで、要求される選択性・測定レンジでゲスト分子のセンシングが可能になるものと期待される。
第14回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nanotech2015)に参加し、最新の研究成果を発表した。野口誉夫, 山本竜広, 新海征治; 「会合誘起発光を基盤とする分子情報変換~蛍光応答から標的物質の存在・濃度を知る~」, nano tech 2015 第14 回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議, 2015年1月28-30日, 東京ビッグサイト
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Chemical Science
巻: 5 ページ: in press
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Chemistry A European Journal
巻: 20 ページ: 13938-13944
10.1002/chem.201404028
http://www.isit.or.jp/lab4/