研究実績の概要 |
前年度は、2つの2-phenylpyridyl配位子(ppy)と、分子間水素結合を誘起する2,2'-ビイミダゾール配位子(H2bim)を配位させたイリジウム錯体(1)と、H2bimの一つのプロトンをが解離した水素結合ダイマー錯体(2)を合成し、ジクロロメタン中で錯体(2)の発光量子収率が(1)に比べ向上することを見出した。今年度は、発光メカニズム解明のために、2-phenylpyridyl配位子を種々変化させた錯体を新たに合成し、発光挙動の置換基効果について調査した。 ダイマー錯体(piq (1-phenylisoquinoline); (3), bzq (benzo[h]quinoline); (4), MeOppy (2-(4-methoxyphenyl)pyridine); (5), dfppy (2-(2,4-difluoro-phenyl)pyridine); (6)) モノマー錯体 (piq; (7), bzq; (8), MeOppy; (9), dfppy; (10))を新たに合成した。ダイマー錯体(4), (6)については、単結晶が得られたので結晶構造解析し、Hbim同士の相補的な水素結合が形成されていることを確認した。発光スペクトル、吸収スペクトルの結果から、ジクロロメタン中において水素結合型ダイマー錯体(3)~(6)の発光極大波長、吸収極大波長はモノマー錯体(7)~(10)と比較して、それぞれ約10 nm長波長シフトした。発光量子収率は、得られたダイマー錯体すべてが、モノマー錯体に比べて配位子によって差はあるものの概ね2倍程度高い値になることが確認された。このことからphenylpyridyl配位子の依らず、相補的な水素結合を有するダイマー錯体の発光挙動は向上することが確認された。また、発光の輻射速度定数、無輻射速度定数を算出した結果、ダイマー錯体を形成することで、無輻射速度定数が低下しており、強固な水素結合により熱的な失活が抑制され、発光が誘起されていることが示唆された。
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