研究課題
本研究ではポーラス構造を持つ金属錯体結晶を合成し、ポーラス空間内に取り込まれたゲスト分子の熱運動の凍結、融解に伴う構造相転移と誘電異常を調べることが目的である。集積型ポーラス結晶[La{(COO)2}1.5(H2O)3].2.5H2Oは、Laイオンがシュウ酸イオン配位子を介して2次元ハニカム格子を形成し、それらの二次元層間に乱れた水分子が存在している構造をしている。本年度は、[La{(COO)2}1.5(H2O)3].2.5H2O単結晶の誘電特性および温度変化に伴う構造変化を調べた。その結果、[La{(COO)2}1.5(H2O)3].2.5H2Oの誘電率が高い異方性を示すことが判った。電場が層状方向に垂直な時には、誘電率が小さく、あまり大きな温度依存性を示さなかった。それに対して電場が層状方向に平行な時には、120 Kと250 K近傍に大きな誘電異常を見出した。誘電率は室温から250 K付近までは大きな変化は見られなかったが、250 Kより以下の温度で温度下降と共に徐々に増加した。誘電率は120 K付近でピークとなり、そこから急激に減少した。格子定数の温度変化を測定した結果、250 K近傍で格子が三倍周期構造となり、これは層間内の水分子の熱運動の凍結、融解に伴った一次構造相転移があることが明らかになった。室温から250 Kまでディスオーダーで位置の決まっていなかった水分子が多いが、構造相転移後オーダーになっている水分子が徐々に増えたことにより誘電率が増加していったと考えられる。また、120 K付近で水分子の熱運動の完全凍結に伴って、誘電率が急激に減少していったと推定される。
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