研究実績の概要 |
本研究では、実施者が独自に研究を進めている「固相多点担持ホスフィン配位子に基づく高活性不均一系金属触媒の創製」を鍵とし、非白金元素触媒による実践的有機合成手法の開発を目的としている。本年度は、新たな固定化ビスホスフィン配位子の合成と、ニッケルを触媒とするクロスカップリング反応への適用に取り組み、以下のような顕著な成果を得た。
ポリスチレン四点架橋ビスホスフィン(PS-DPPBz)は、1,2-ビス[ビス(p-スチリル)ホスフィノ]ベンゼンを架橋剤として用い、スチレン類とのラジカル懸濁重合により合成した。得られた不溶性ビーズ状ポリマーは、トルエンやテトラヒドロフランなどに対して優れた膨潤特性を示した。31P CP/MAS NMR測定による金属錯化挙動の解析から、PS-DPPBzは金属と配位子ユニットの1:1型錯体を選択的に形成することが明らかとなった。
PS-DPPBz配位子が、1,3-アゾール類とフェノール誘導体とのニッケル触媒C-H/C-O型クロスカップリング反応(JACS, 2011, 134, 169)に有効であることを見出した。対応する均一系配位子である1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンや、以前に実施者が開発したポリスチレン三点架橋トリアリールホスフィンを用いると、反応はほとんど進行しない。このことから、ビスホスフィン配位子の固定化が、本反応における高い触媒活性の発現に重要であることが明らかとなった。
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