研究課題/領域番号 |
25810057
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
近藤 梓 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30645544)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複素環骨格構築 / ホスファゼン / 有機塩基触媒 / 求核触媒 |
研究概要 |
従来の触媒では構造上の問題から導入が困難であった求核部位の隣接位への「不斉点の導入」ならびに近年触媒活性に重要な役割を果たすことが指摘されている求核部位の隣接位への「水素結合形成を可能とする官能基の導入」を主たる指針とする分子設計を施した新規求核触媒の開発を目的とし、研究を行った。具体的には、求核触媒としての機能を有することが知られている1,2,4-トリアゾールの二つの炭素原子をリン原子に置き換えたトリアザジホスホールを母骨格とする新規触媒を設計し、その合成を試みた。その結果、計画した合成経路にいくつかの改善を加えることで母骨格となるトリアザジホスホール骨格の短工程構築に成功した。この化合物の構造は現在のところ各種核磁気共鳴スペクトル測定および分子量測定によって確認している。トリアザジホスホール骨格はこれまで合成例が非常に限られており、とりわけその簡便な合成法は知られていなかった。また、今回の確立した環骨格構築法は母骨格上に様々な置換基の導入を可能にする方法であり、触媒ライブラリの構築の観点からも優れた合成経路であるといえる。よって今回の成果は複素環化学の観点から意義深い結果である。しかしその一方で、設計指針の一つである「水素結合形成を可能とする官能基の導入」については当初の計画に反し、導入が困難な状況となっている。それは、環骨格の構築の際に必要である窒素上の保護基のその後の脱保護が困難である点に起因する。したがって今後の展開としては分子設計の見直しが必要であると考えられる。また、現在までに合成できている新規化合物を用い、触媒反応の検討も行った。その結果、ホスファゼン化合物に由来する塩基性を有しており、塩基触媒として作用することが確認された。その一方で、目的とする求核触媒としての機能はいまだ見いだせていない。この点も今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標とする複素環骨格の短工程構築に成功した。したがって、本年度目標としていた合成法の確立という点からはある程度その目標を達成できたと考えている。その一方で当初の設計指針である「水素結合形成を可能とする官能基の導入」に至っていない。これは環骨格の構築の際に必要である窒素上の保護基のその後の除去が困難である点に起因する。さらに現在までに合成できている化合物を用いての触媒反応の検討も開始している。その結果、塩基触媒としての機能は確認されたものの、本研究で目的とする求核触媒としての機能はいまだ見いだせていない。以上のことから「研究の目的」の達成度としては「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」でも述べたように、「水素結合形成を可能とする官能基の導入」が現在のところ困難となっている。したがって分子設計の見直し、あるいは合成経路の改善が今後の研究推進の鍵と考えている。また、現在までに合成した新規化合物が塩基性を有することが確認されていることから、求核触媒としての利用に限定せず、有機塩基触媒、あるいは遷移金属の配位子としての活用も検討し、今回設計した分子のこれまでにない新たな「多機能性分子」としての幅広い機能開発を進めていく。
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