研究課題/領域番号 |
25810058
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 和弘 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60375607)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 閉環メタセシス / 縮合環芳香族化合物 / 面不斉 / フェロセン / ルテニウム / グラブス触媒 / ビニルナフタレン |
研究概要 |
縮合環芳香族化合物は、機能性材料や染料、顔料、不斉触媒の重要な構成要素など多くの用途に利用されている重要性の高い化合物である。しかしながら、有効な合成手法が限られているために、合成の困難な縮合環芳香族化合物が多数知られている。そこで、このような需要の高い縮合環芳香族化合物の新たな汎用的合成法の開発を目指して本プロジェクトを開始した。本年度は、まず始めに面不斉ピリジン誘導体(Fc*-DMAP)の汎用的合成法の開発に着手した。Fc*-DMAPはユニークな面不斉キラリティーをもつ触媒であるが、多くの不斉反応で優れた選択性を示すことで知られている。しかしながら、これまでにその汎用的合成法が確立されていないために工業化などの大スケール合成においては、その潜在的なポテンシャルが十分に引き出されていないというのが現状である。本触媒のオリジナルの合成法の最大の問題点は、ラセミ体の分割を行う目的でキラルHPLCを利用していることである。このため大量合成が困難になっている。我々は、これまでに独自に開発してきた閉環メタセシス反応を利用する芳香族化合物合成法を用いることで、キラルHPLCに頼らないエナンチオ選択的なFc*-DMAPの実践的な合成法の開発を試みた。具体的には、Kaganらによって報告された光学活性アセタール部位をもつフェロセンを出発原料にして、側鎖を修飾しRCM前駆体を得た後、閉環/芳香属化させるという試みである。様々な検討を行った結果、狙い通りにマルチグラムスケールで目的のFc*-DMAPの汎用的合成ルートを開発することに成功した。 また、その他の縮合環芳香族化合物として、3-ビニルナフタレン等の新たな合成法の開発にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、面不斉ピリジン誘導体(Fc*-DMAP)の合成に着手し、狙い通りに合成ルートの確立に成功した。現在、本ルートを利用して種々の誘導体の合成を行っている。また本年度は、ビニルナフタレンの新たな合成法の開発にも成功しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、本年度開発した合成法を利用して面不斉ピリジン誘導体(Fc*-DMAP)の新規誘導体を多数合成し、これらを不斉触媒として利用することで性能の評価を行う。 また、本年度得られた知見を基に、メタセシス反応以外の閉環反応によるFc*-DMAPの新たな合成ルートの開発も目指す。
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