研究実績の概要 |
ピリジン環の4位にジメチルアミノ基を有するN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)は様々な有機合成反応で広く利用されている求核的有機触媒であり、これらにキラリティーを導入し、不斉反応に応用する研究は重要な研究課題として位置付けられている。そのようなキラルDMAP触媒の中でも特に有用なものとして知られているのが、米国マサチューセッツ工科大学のGregory C. Fu教授らによって開発された面不斉ピリジン誘導体(Fc*-DMAP)である。Fc*-DMAPはユニークな面性キラリティーをもつ触媒であるが、多くの不斉反応で優れた選択性を示す汎用性を備えている。しかしながら、工業化などの大スケール合成においては、その潜在的なポテンシャルが十分に引き出されていないのが現状である。その理由は、本触媒のオリジナルの合成法がキラルHPLCによるラセミ体の直接光学分割に基づくもので、大量合成に不向きで実用性を欠いているためである。残念なことに、発見から十数年経過した現在も本触媒に関する真に優れた合成ルートは報告されていない。そこで、本研究では、研究代表者らの芳香環直接構築法を応用することで、光学分割に頼らない面不斉ピリジン誘導体の新たな選択的合成法の開発を試みた。 昨年度、基本合成ルートの確立に成功したため、本年度は本ルートを利用して種々の誘導体の合成を行った。その結果、目論み通りに面不斉ピリジン誘導体の様々な誘導体の合成に成功した。我々の方法論を応用すれば、面不斉ピリジン誘導体のピリジン環の4位にアミノ基だけでなく、ハロゲンやアルキル基などの置換基をも導入することができる。
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