研究実績の概要 |
昨年までに、二官能性トレーガー塩基と塩化白金(II)錯体の2:2の反応によって四角形型の白金二核錯体を合成することに成功した。最終年度はこの結果をもとにして、より複雑な有機および有機金属構造体の合成に取り組んだ。まず四角形型の白金二核錯体を強い電子供与性を有するリン配位子存在下で加熱すると、還元的脱離反応が進行してトレーガー塩基の環化二量体を合成することができた。このトレーガー塩基は環状構造の為に高度に歪んでおり、2つの芳香環がつくる角度が既に報告されているトレーガー塩基誘導体のなかでももっとも小さくなることがわかった。この結果は実測のスペクトルとの比較を含めた、構造の理論計算から推測したものである。一方で前年までの結果をもとにして、アルキニル白金錯体部分を含む環状複核錯体の合成に取り組んだ。具体的には1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)を支持配位子として有する白金(II)錯体の合成をおこなった。例えばPtCl2(dppf)と1,3-ジアルキルベンゼン、あるいは2,6-ジアルキニルピリジンとの反応をおこなったところ、それぞれ2:2あるいは3:3で反応が進行して、環状の複核錯体が生成した。
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