研究課題/領域番号 |
25810060
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
永縄 友規 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00613233)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケイ素 / 触媒的不斉合成 / 還元 / 遷移金属 / フェナントロリン / イリジウム / ロジウム |
研究概要 |
未だ研究例の限られているケイ素の触媒的不斉合成に関して、遷移金属触媒によるヒドロシラン類の酸化的付加とそれに続く骨格変換を基軸とする不斉非対称化の方法論に着目し、適切な不斉触媒の創成と基質デザインの両面から研究を行っている。反応としては、最近Hartwigらによって報告されたイリジウム触媒によるC-H結合の直接的シリル化反応を取り上げ、本法の不斉化への適用を検討した。本反応ではフェナントロリン(Phen)がイリジウムの効果的な配位子として機能することが見出されており、Phenを母骨格とする不斉配位子を利用すれば不斉反応への応用が可能だと考えた。しかしながら、キラルなPhen配位子の報告例は天然物から誘導されたものが少数知られるのみであったため、今回、汎用されるキラル素子であるビナフトールから誘導される新規軸不斉Phen配位子の設計を併せて行った。本配位子を用い、イリジウム触媒存在下、Phenylbisphenethylhydrosilane類の不斉非対称化をモデル反応として検討を行ったところ、目的とするC-H結合の直接的シリル化反応が進行し目的とする キラルケイ素中心を含む環状有機ケイ素化合物を中程度のエナンチオ選択性で得られることを見出した。次に、炭素―ケイ素結合の形成手段としてより温和な条件で反応が進行するアルケン類のヒドロシリル化を選択し、同様の不斉非対称化の手法によるキラルケイ素中心の不斉合成を試みた。モデル基質としてPhenylbis(vinylcyclohexenyl)hydrosilaneを選択し、同様のPhen配位子および遷移金属触媒を用いたエナンチオ選択的分子内ヒドロシリル化を検討した。本反応ではロジウム触媒がヒドロシリル化をもっとも効率よく進行させる遷移金属触媒であることが分かり、良好なエナンチオ選択性で目的物を得ることに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設計した、ヒドロシラン類の不斉非対称化の方法論のキラルケイ素中心構築における妥当性を実証できた点と、そのための新規不斉触媒の設計方針が明らかになりつつある点を鑑みて、計画は順調に進展しているものと判断している。今後は、現在のエナンチオ選択性をさらに改善すべく、更なる配位子修飾を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
エナンチオ選択性のさらなる向上と併せて、得られたキラル有機ケイ素化合物の各種変換を検討する予定である。例えば、本生成物は酸化処理することにより、シクロオクタジエンのケイ素類縁体であり、有機EL素子など機能性分子としての応用が期待できるシロール類へと変換できる。また、現在は立体制御が容易であると考えられる分子内反応のみを検討しているが、分子間反応へと発展していきたい。特に、ジヒドロシラン類のエナンチオトピックな二つ水素を識別する反応を取り上げ、各種変換が容易な3級キラルヒドロシラン類の構築を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬などの必要な物品費が当初の計画と比較し、少額にて購入できたため。 次年度、当初予定していなかった国際学会参加のため多額の旅費が必要となることがみこまれるため、本年度の予算余剰分をこの費用に充当する予定である。
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