研究課題/領域番号 |
25810062
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
喜多 祐介 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40593489)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アミド変換 / 加アルコール分解 |
研究概要 |
アミドは高い化学的安定性を有することからその変換は非常に困難であり、代表例である加水分解や加アルコール分解では強酸または強塩基条件における加熱が必要である。多核錯体は種々の触媒反応に対して特異な反応性や選択性を示すことをこれまでの研究で明らかとしていることから、二種類の元素を巧みに用いることでアミドの変換反応を効率的に進行させる触媒系の開発が可能であるのではないかと考えた。1級アミドの加アルコール分解反応をモデル反応として種々の触媒の検討を行ったところ、スカンジウムトリフラートとボロン酸エステルを組み合わせた触媒系で効率良く反応が進行することを見出した。ボロン酸自体に触媒活性は無く、スカンジウムとホウ素化合物を組み合わせることで初めて高い触媒活性が発現する。本触媒系は種々の1級アミドに適用可能であり対応するエステルが高収率で得られた。さらに、本触媒系はアセチルアニリン誘導体の脱アセチル化にも適用することができる。ボロン酸エステルの役割に関する知見を得るために量論反応を試み、各種分光学的手法により解析を行ったところ、申請書に記載した多点配位を利用したアミドの活性化ではなく、スカンジウムがアミドを求電子的に活性化し、ボロン酸エステルがアルコールを活性化するというスカンジウムとボロン酸エステルの協同的な効果であることが分かった。また、ボロン酸エステルによるアルコールの活性化にはスカンジウムトリフラートが必須であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は温和な条件でのアミド化合物の変換反応であり、平成25年度研究計画では、アミドへの多点配位を利用したアミドのエステル化反応の開発を行う予定であったが、スカンジウムトリフラートとボロン酸エステルを用いる触媒系の機構研究を行うことにより、想定していたアミドに対するスカンジウムとホウ素の多点配位では無く、アミドとアルコールを同時に活性化する機構であることを明らかとした。想定の活性化機構では無かったものの、アミドの加アルコール分解がスカンジウムとホウ素の協同効果を用いることで中性かつ温和な条件で進行したことから、目的とする温和な条件でのアミドの変換反応の第一歩として加アルコール分解は達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
ルイス酸とボロン酸エステルの協同効果によりアミドの加アルコール分解が進行することを明らかとしているものの、基質は1級アミドまたは窒素上にアリール基を有するアミドに限られている。この原因として、ルイス酸とボロン酸エステルとの相互作用が弱いためであると推測している。そこで、ルイス酸と強く相互作用できるボロン酸エステルを設計することで、より広い基質一般性を有する触媒系が達成できると考えられる。具体的には、フェニルボロン酸エステルの芳香環上に配向基となりうるドナー性の置換基を導入した化合物や、環内にルイス酸を取り込むことが可能なクラウンエーテル型のボロン酸エステルなどの合成を試みる。 また、ボロン酸エステルがアルコールを活性化することに着目し、アルコールが求核剤として働く触媒系に展開する予定である。予備的な実験であるが、oxa-Michael反応にホウ素化合物を添加することにより収率が向上することを明らかとしている。さらに、組み合わせる金属触媒を変えることにより、ニトリルのエステル化反応やアルキンのヒドロアルコキシ化反応にもボロン酸エステルの添加効果が適用可能ではないかと考えられ、今後検討を行っていく。
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