研究課題/領域番号 |
25810064
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
永野 高志 高知大学, 教育研究部自然科学系, 助教 (80500587)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鉄触媒 / クロスカップリング / アリル位置換反応 / アレン |
研究概要 |
本研究課題において平成25年度中に得られた成果は以下の通りである。 (1)鉄触媒により,アリルエーテルの炭素ー酸素結合が開裂し,Grignard 試薬とクロスカップリングするアリル位置換反応が進行することをすでに見出していたが,今年度は本反応の詳細を調査した。様々なタイプのアリルエーテル基質を合成し,その反応性を調査した。その結果,脱離基の根元(アリル位)の級数と二重結合の置換様式によって反応するものとしないものが明確に分類できることが解った。ラジカル捕捉剤であるTEMPOを加えて反応を行っても,TEMPOと結合した化学種は得られないことから,反応はアリルラジカルを経由していないことが示唆された。また重水素ラベリング実験の結果より,アリル部位の両末端に立体的な差が無い場合は,SN2型とSN2'型の置換生成物が等しい割合で得られることが解った。これらの結果より,本反応はπアリル鉄種を中間体として進行しているのではないかと考えている。 (2)アリル化合物として,2-ブロモ-1,3-ジエン類を用いた場合の反応挙動に興味を持ち検討を行った。その結果,鉄触媒存在下で Grignard 試薬と反応し,置換アレンが生成することを今回初めて見出した。同ジエンをパラジウム触媒存在下,マロネートのようなソフト求核剤と反応させるとアレンが生成することはすでに報告されているが,Grignard 試薬のようなハードな求核剤を用いるとアレンではなく,脱離基の付いていた位置でカップリングし,1,3-ジエンが生成するとされている。鉄を触媒とすることにより,パラジウム触媒では行えない形式の反応が進行することが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現時点で研究は当初の計画通り順調に進行しており,アリルエーテルを基質とするアリル位置換反応の詳細を明らかにすることができたと考えている。それに加え,当初の計画にはなかった2-ブロモ-1,3-ジエンを用いた反応では, Grignard 試薬との反応で置換アレン誘導体が生成することを新たに見出しており,研究にさらなる広がりを持たせることができている。このアレン生成反応についても予備的な成果をすでに日本化学会春季年会にて報告しており,予定外の良好な結果を見出すことができたという点から,「当初の計画以上に進展している」と判定した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに見出した知見を基に,今後は以下の点について重点的に研究を行っていく。 (1)アリルエーテルを基質とする反応では,これまで本格的に試してはいない脱離基が分子内に残るタイプの反応(酸素が環内に含まれるアリルエーテルを用いたアルコールの合成)を検討する予定である。これまでに蓄積した研究結果によって投稿論文の骨格はおおむね完成しているので,細かい化合物データの収集などを行いできるだけ早い段階で一度まとめたい。 (2)環化クロスカップリングについても,新規化合物の物性値測定など細かい作業が残っているので引き続き行っていく。 (3)アレン合成については,まだ予備的な成果しか得られていないので,基質適用範囲の詳細をつめていく必要がある。アルキル基の置換した基質について検討していないので,基質合成を行い,順次それらの反応について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2717円が残っているが,これは端数が残っただけであり,ほぼ全額が執行されたものと考えている。 残額の2717円は,次年度予算と合わせて消耗品の購入に充てる予定である。
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