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2013 年度 実施状況報告書

流動場における高分子孤立鎖のAFM直接観察

研究課題

研究課題/領域番号 25810069
研究種目

若手研究(B)

研究機関山形大学

研究代表者

西辻 祥太郎  山形大学, 理工学研究科, 助教 (00564858)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード単分子膜 / 高分子鎖
研究概要

固体基板上に高分子融体を滴下した時の広がり方には接着やぬれ、摩擦などの界面現象が大きく関係しているが、高分子融体の流動メカニズムや分子量依存性は現在でも未解明のままである。これらを明らかにするには流動場中で高分子鎖を直接観察するしか方法はないが、これまでそのような実験データはない。熊木らはポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリノニルアクリレート(PNA)ブレンド単分子膜を原子間力顕微鏡(AFM)で検討し、PNA単分子膜に少量可溶化したPMMA孤立鎖を観察することに成功している。また高分子融体が固体基板上に広がる場合、その流動先端には単分子膜レベルの厚みを持ったPrecusor filmが広がっていることが知られている。本研究ではPMMA/PNAのPrecurser filmを観察することで流動場中での高分子鎖の運動を分子レベルで直接観察し、流動場におけるPMMA高分子鎖の運動性について検討した。その結果、以下のことを達成した。
(1)恒温恒湿装置を導入し、湿度を制御しながらin-situでAFMの観察を可能にした。このことによりPrecursor filmの流動速度を制御できるようになった。
(2)恒湿下でPMMAオリゴマーの液滴の広がりを観察し、その液滴の体積の減少からPrecursor filmの広がり速度を求めた。
(3)PMMA/PMMAオリゴマー系のPrecursor filmを恒湿下で観察し、PMMA分子鎖の観察に成功した。また体積の減少から求めた広がり速度よりも速いスピードで流れていることが明らかとなり、この事よりPMMAオリゴマーのみが先に流動していることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、流動場中での高分子単分子膜を原子間力顕微鏡により分子レベルで直接観察することにより、流動場中における高分子鎖の運動性を明らかにすることである。
これまでにアクリルケースの中にAFM装置を密閉し、高温恒湿装置を導入することにより恒温恒湿下でのAFM測定を可能とした。このことから恒湿下でPMMAオリゴマーの液滴が流動していく様子を観察し、その液滴の体積の減少からPrecursor filmが広がっていく速度を見積もることができた。このことはこの後のPMMA/PMMAオリゴマー系の実験を効率よく進めるために必要である。
またPMMA/PMMAオリゴマー系において高温恒湿下でPrecursor filmを観察し、流動場中でのPMMA高分子鎖の観察に成功した。また液滴の体積の減少から求めた広がり速度よりも速いスピードで流れていることからPMMAオリゴマーが先行して流動していることがわかった。これまで流動場中での高分子鎖の運動を分子レベルで直接観察した例はなく、極めて画期的な結果といえる。

今後の研究の推進方策

これまでにPMMA/PMMAオリゴマー系においてPrecursor film中のPMMA高分子鎖の直接観察に成功した。しかし、未だ両末端間距離や回転半径を求めることによる流動場中におけるPMMA高分子鎖の広がりや配向の定量的な評価は達成されていない。また分子量依存性についても実験結果が不足している。今後湿度と分子量を系統的に変化させ、AFM観察の定量的な評価から高分子鎖の運動性について詳細な評価を行う予定である。
またマトリックスのPMMAオリゴマーを各種ポリアクリレートに変えてAFM観察を行う予定である。PMMA鎖との相互作用を異なる各種ポリアクリレートに変えることにより系統的に変化させ、流動場中でのPMMA高分子鎖の広がりや配向を評価し、高分子鎖の運動を普遍的に理解する予定である。予備実験の結果、PMMAと各種ポリアクリレートは単分子膜を形成し、PMMA分子鎖を観察できることは見出している。またこれまでに流動場中でのPMMA高分子鎖の観察に成功しているため、今後マトリックスが異なる系においても様々な実験結果が得られると考えられ、高分子鎖の運動性について明らかになるはずである。

次年度の研究費の使用計画

本研究は原子間力顕微鏡(AFM)により流動場中の高分子鎖を分子レベルで直接観察し、高分子鎖の運動性を明らかにすることが目的である。次年度使用額が生じた理由として2点挙げられる。
(1)高分子試料はPMMAの分子量依存性を精密に測定するために様々な分子量の高分子試料を購入する予定であったが、未だ研究が分子量依存性を調べるに至っていない。
(2)AFM測定においてカンチレバーは必要不可欠であるが、予想よりも使用数が少なかった。
これまでの研究で流動場中におけるPMMA高分子鎖の観察に成功している。これから様々な分子量における高分子鎖の観察を行う予定であるため、多くの高分子試料が必要となる。またこれから研究が加速すると考えられるのでカンチレバーの使用頻度もあがる。そのため完治レバーの購入費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Two-Dimensional Phase Separation of a Poly(methyl methacrylate)/Poly(L-lactide) Mixed Langmuir Monolayer via a Spinodal Decomposition Mechanism2013

    • 著者名/発表者名
      Go Sato, Shotaro Nishitsuji, Jiro Kumaki
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry B

      巻: 117 ページ: 9067-9072

    • DOI

      10.1021/jp403195g

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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