研究課題/領域番号 |
25810072
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
三輪 洋平 岐阜大学, 工学部, 助教 (10635692)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子末端 / 伸縮振動 / 重水素ラベル / 赤外分光測定 / ガラス転移温度 |
研究概要 |
分子鎖末端および内部部位を、重水素により選択的にラベルしたポリスチレン(PS)の赤外分光(FT-IR)スペクトル解析を行った。これにより、直鎖状高分子の分子鎖内部と比較して、末端部位では分子内相互作用が小さいために化学結合の伸縮振動が速いことを発見した。これは、直鎖状分子固有、かつ、共通の特性であり、新たな高分子の基本特性の発見として、大変興味深い。 さらに、FT-IRスペクトルの温度依存性から、ラベル部位近傍の局所的なガラス転移温度(Tg)を直接測定する手法を開発した。そして、分子鎖内部および末端部位を選択的に重水素化したPSについて値を比較し、両者のTgにほとんど差が無いことを明らかにした。すなわち、高分子末端には可塑剤効果があり、材料全体のTgを低下させる効果がある一方で、末端近傍でTgが局所的に低下しているわけではないことを、直接的に証明した。これは、高分子セグメント間に協同性がつよく働くTg近傍では、高分子末端ですら独立的に運動できないことを示す、重要な結果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バルク状態および希薄溶液中の高分子鎖において、末端では分子内相互作用が小さいために、化学結合振動が分子鎖内部と比較して速いことを、実験と計算の両面から明らかにすることができた。さらに、高分子末端近傍の局所的なガラス転移温度の測定に成功した。研究の進行状況から、H25年度の予定として挙げていた、シリカ表面に吸着させた高分子鎖の末端特性を次年度に延期する一方で、H26年度の課題として挙げていた希薄溶液中の末端特性に関して、予定を前倒しして実験を行い、成果を出すことができている事から、おおむね予定通りに目的を達成することができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度に延期したシリカ表面に吸着させた高分子鎖の末端特性と、当初から予定していた、ナノシリンダー中に閉じ込めた高分子鎖の末端特性に関して評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進行状況にともない、本年度と次年度の研究実施内容を一部入れ替えたため。 研究実施内容を入れ替えたために助成金の消費が遅れているが、最終的には予定通りに使用する予定である。
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