ポリスチレンの分子鎖末端の動的な挙動を赤外分光測定と重水素ラベル法を利用して評価した。まず、固体および溶液中の両方において、分子鎖末端では主鎖の途切れによって繰り返し単位間の相互作用が局所的に低下しているために、分子鎖内部と比較して結合振動が速いことを発見した。さらに、振動数の温度依存性から、それぞれのラベル部位近傍領域のガラス転移温度(Tg)を測定し、分子鎖末端と内部部位の近傍でTgにほとんど差が無いことを明らかにした。この結果は、Tg近くの温度では、隣接する高分子セグメント間の協同性が強く、そのために高分子末端ですら独立的に緩和できないことを示していると考えられる。
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