研究課題/領域番号 |
25810075
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
田中 知成 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (70585695)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 糖鎖高分子 / 無保護糖活性化 / 脱水縮合剤 / オリゴ糖 / 複合型糖鎖 / RAFT重合 / レクチン / 金ナノ粒子 |
研究概要 |
細胞表層に存在する糖鎖は、密集すること(クラスター化)によって、強い生理活性機能を発現している。クラスター化した糖鎖を合成化学的手法によって構築するアプローチが多数試みられているが、糖のヒドロキシ基の保護・脱保護など煩雑な操作が不可欠であり、複雑なオリゴ糖鎖への適用は困難を極める。本研究では、糖誘導体の一段階合成法を基盤合成技術とした簡便かつ効率的でオリゴ糖鎖に適用可能な糖モノマーおよび合成した糖モノマーの重合による糖鎖グラフト化高分子の合成法を開発する。さらに、合成した糖鎖高分子を固相表面に修飾するなどしてバイオセンシングへ応用することを目的とした。 脱水縮合剤2-chloro-1,3-dimethylimidazolinium chloride (DMC)を用いる糖誘導体の一段階合成法によって一段階合成できるチオグリコシド誘導体およびグリコシルアジドを経由して、アクリルアミド基を有する二種類の糖モノマーを、保護基を使用することなく簡便に合成した。チオグリコシドを経由する場合には、無保護糖からワンポットで糖モノマーを合成することができた。グリコシルアジドを経由する場合には、二糖から七糖までの直鎖状オリゴ糖の他、非還元末端にシアル酸を有する複合型糖鎖にも適用できた。続いて、得られた糖モノマーを用いて重合反応(フリーラジカル重合、RAFT重合)することで糖鎖グラフト化高分子を合成することができた。RAFT重合によって得られた糖鎖高分子の末端をチオールへと還元した後、金ナノ粒子や金基板へと固定化し、レクチンとの結合能評価を行ったところ、合成した糖鎖高分子は対応するレクチンと強く相互作用することが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チオグリコシド、グリコシルアジドを経由する糖モノマー合成においては、両手法ともに生成物を単離する方法を確立できた。また、重合反応においては、重合開始剤を適切に選択することで35~70℃の任意の温度で糖鎖高分子を合成することができた。本合成法は、単糖から七糖までの直鎖状オリゴ糖、非還元末端にシアル酸を有する複合型糖鎖にも適用でき、得られた糖鎖高分子は、各々の糖鎖構造に対応するレクチンと強く相互作用することが確認できた。以上のことから、本年度の研究は、ほぼ順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
グリコシルアジドを経由する糖モノマー合成において、様々なオリゴ糖鎖にも効率的に適用できることが明らかとなったため、N-結合型糖鎖を中心に様々な糖鎖構造を有する糖鎖高分子の合成へと展開する。そのためには、原料となるN-結合型糖鎖を入手できる量が限られるため、極少量でのモノマー合成や精製、重合反応の方法を確立する必要がある。また、得られた糖鎖高分子の糖鎖構造の違いが、レクチンやウイルスなどとの結合に与える影響を水晶振動子マイクロバランス(QCM)法や赤血球凝集阻害試験などにより評価する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
少額残金を次年度に繰り越した。 次年度支給と合わせて使用する。
|