研究課題/領域番号 |
25810076
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
足立 馨 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (40401533)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 制御ラジカル重合 / 相互作用 / マクロモノマー |
研究概要 |
本研究では、制御ラジカル重合中に適当な微粒子を添加することで、モノマーと微粒子表面との非共有結合的な相互作用により微粒子表面でのモノマー局所濃度を上昇させ、反応速度の制御を行うことを目的としており、これにより、溶媒中での制御ラジカル重合の高速化および、モノマー選択的重合や、複数のモノマーをワンポットで傾斜的またはブロック的に重合する新規合成法の開発を行っている。本年度は溶媒中での原始移動ラジカル重合において、モノマーと非共有結合的に相互作用する微粒子の添加効果の確認を行った。モノマーには、水素結合可能なエーテル酸素原子を繰り返し単位に有し、多点相互作用可能なポリエチレンオキシド(PEO)マクロモノマーを用い、添加微粒子には、表面に多数の水酸基を有する各種金属酸化物微粒子を用いた。PEOマクロモノマーについては、その繰り返し単位数の影響を調べるため、分子量の異なるマクロモノマーについて検討を行った。その結果、酸化亜鉛微粒子を添加剤として加えて原子移動ラジカル重合を行った場合、PEOマクロモノマーの重合速度は、加えない場合と比較して大きく上昇することがわかった。シリカ微粒子を添加剤として加えた場合も同様の効果が確認されたことから、PEOマクロモノマーと添加微粒子との相互作用による効果と考えられる。また、PEOマクロモノマーの分子量によらず、重合速度の上昇が確認されたことから、弱い相互作用でも重合速度が上昇することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は以下の2つである。①溶媒中での非共有結合的な相互作用を、これまでの材料同士の接着や複合化といった概念を越えて、新たに反応の制御に用いることで、制御ラジカル重合の反応速度の制御を行い、これにより重合速度が比較的遅い、溶媒中での制御ラジカル重合の高速化を行う。②このメカニズムを拡張し、非共有結合的な相互作用を利用して、複数のモノマーから目的のモノマーのみを選択的に重合するモノマー選択的重合法と、複数のモノマーをワンポットで傾斜的またはブロック的に重合する新規合成法の開発を行う。このうち、平成25年度の目標は、①に挙げた溶媒中での制御ラジカル重合の高速化であり、これについては研究実績の概要で述べたとおり、PEOマクロモノマーをモノマーとして用い、酸化亜鉛微粒子またはシリカ微粒子を添加剤として用いた場合、両者間での非共有結合による相互作用による原子移動ラジカル重合の重合速度の上昇が達成されている。そこで現在、他のモノマーと添加剤の組み合わせについての検討を行っている。②に挙げたモノマー選択的重合ならびにワンポット傾斜重合またはブロック重合については、PEOマクロモノマーと他のモノマーとの共重合であり、当初の予定通り、平成26年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究において、PEOマクロモノマーをモノマーとして用い、酸化亜鉛微粒子またはシリカ微粒子を添加剤として用いた場合、両者間での非共有結合による相互作用による原子移動ラジカル重合の重合速度の上昇が達成されている。そこで平成26年度は、平成25年度の結果を基に、微粒子添加によるモノマー選択的重合法の開発について研究を行う。制御ラジカル重合において、金属酸化物微粒子添加によりモノマーの濃縮効果による重合速度の向上が確認されたことから、金属酸化物微粒子表面が反応場となり、粒子表面近傍にて重合が進行していると考えられる。そこでこれを利用すると、2種類以上のモノマー共存系で、微粒子と相互作用するモノマーのみを重合することが可能となる。そこで、水素結合および芳香族間相互作用を利用した、モノマー選択的重合について取り組む。また、微粒子と相互作用するモノマーが選択的に先に消費されるため、ワンポットでブロック共重合体合成が可能となる。そこで、金属酸化物微粒子と相互作用の小さい、ポリスチレンマクロモノマー等のモノマーを用い、2種類のモノマー存在下で制御ラジカル重合を行う。得られた高分子は、未反応のモノマーを除去した後、NMRにて組成比を調べ、金属酸化物の影響や、マクロモノマーの分子量による影響を調べる。モノマーと微粒子間に働く相互作用の強さにより、モノマー選択性が確認されない場合、より強固に相互作用する官能基をモノマーおよび微粒子双方に導入し、選択性を向上させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時に購入予定であった装置について、専攻内の他の教員所有の装置を借りることができたことと、予算の大部分を消耗品が占めたことから、当該年度での購入を見送った。そのため、その分の次年度使用額が生じた。 当初購入予定の装置機種を再検討し、消耗品を含めて予算内に収まるように調整をする。 次年度使用額と交付額との合計額で購入可能な機種を購入予定である。
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