研究課題/領域番号 |
25810081
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
升谷 敦子 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (10633464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カチオンセンシング / 近赤外 / 白金錯体 |
研究概要 |
今年度は近赤外(NIR)吸収を示すビス(o-ジイミノベンゾセミキノナト)白金(II)誘導体の1. 金属イオン認識能と,2. 平面型有機カチオン認識能に関する検討を行った. 1. ビス(o-ジイミノベンゾセミキノナト)白金(II)はDMSO溶液中で極大吸収波長711 nmのNIR吸収を示す.この溶液に種々の金属イオンを添加しNIR吸収スペクトルを測定したところ,Pd2+共存下でNIR吸収が減少することを見出した.さらに,電子供与性のtert-ブチル基を有する錯体を用いた場合は,さらに大きくNIR吸収が減少し,Pd2+への応答性には配位子の電子的特性が関与することが示唆された. 2. 平面型有機カチオン認識能に関して,メチルビオロゲン共存下でのビス(o-ジイミノベンゾセミキノナト)白金(II)のNIR吸収特性を検討したが,メチルビオロゲンによる明確な吸収スペクトル変化は観測することができなかった.そこで,シクロデキストリンへの包接を利用して,メチルビオロゲンとビス(o-ジイミノベンゾセミキノナト)白金(II)の相互作用を促進することを目指した.まず,ビス(o-ジイミノベンゾセミキノナト)白金(II)誘導体のシクロデキストリンへの包接挙動を精査し,錯体とシクロデキストリンの包接体の組成比及び安定度定数を算出することができた.今後,この錯体の包接挙動を利用する平面型有機カチオンのセンシングへ研究を展開する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白金錯体による金属イオン認識に関しては,認識機構の解明及び感度の向上に関してさらなる検討が必要であるが,金属イオン選択性を見出すことができた.平面型有機カチオン認識に関しては,溶液中で白金錯体と混合するだけでは認識することはできないことが分かった.今後は相互作用を促進するための工夫が必要であり,シクロデキストリンへの包接を利用する予定である.以上のようにカチオンセンサーとしての設計に向けた基礎的知見が得られているので,おおむね順調に研究が進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により,白金錯体がPd2+に対して選択的な認識能を示すことを見出した.しかし,感度の向上のためには,金属イオンに体する親和性を向上させた錯体の設計が必要である.そこで,来年度はジエチレントリアミンを導入したカテコール系配位子を使って,金属イオンへの親和性を向上させた白金錯体の合成を行い,金属イオン認識能を検討する. また, 平面型有機カチオン認識能については,シクロデキストリンへの包接を利用して,錯体と平面型有機カチオンの相互作用を促進することを目指して検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は電気化学用ソフト等の購入,EXAFS測定のための出張を予定していた.しかし,今年度の研究結果から電気化学やEXAFSによる測定よりも,他の手法を用いることが適していることが分かったため,電気化学用ソフト等の購入,EXAFS測定のための出張をとりやめた.以上の理由で,次年度使用額が生じた. 次年度使用額は,今年度とりやめた電気化学用ソフト等の購入,新しい配位子及び錯体合成のための試薬の購入に使用する.
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