研究課題/領域番号 |
25810081
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
升谷 敦子 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (10633464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カチオンセンサー / 速度論的安定性 |
研究実績の概要 |
平成26年度は水溶性のジラジカル錯体及び有機溶媒に溶解するジラジカル錯体を用いて,水溶液中及びDMF溶液中における金属イオンや有機化合物など種々のカチオンに対する認識能の検討を行った.その結果,ジラジカル錯体は,一部の金属イオンや配位能を有する還元剤が共存する溶液中では解離してしまうことが分かった.カチオンセンサーとしてジラジカル錯体を用いるためには,ジラジカル錯体の解離を防ぎ速度論的安定性を向上させることが必要である.そこでキレート効果・マクロサイクル効果によってジラジカル錯体の速度論的安定性を確保することを目的として配位子の化学修飾を行った.水溶性のジアミン配位子をプロピレン基で連結し,この配位子と白金(II)イオンからジラジカル錯体を合成したところ,速度論的安定性を示す半減期は水溶液中で1000倍以上長くなった.以上,ジラジカル錯体の速度論的安定性を確保するためには配位子の化学修飾が有効であることが分かり,カチオンセンサーを設計するにあたっての基礎的な知見を得ることができた. 今後,速度論的安定性のさらなる向上を目指した配位子の合成とジラジカル錯体の合成,及び合成したジラジカル錯体の速度論的安定性の評価を行う.さらに上記の検討から得られる速度論的に安定なジラジカル錯体を用いて,金属イオンや有機化合物など種々のカチオンが存在する溶液中における吸収スペクトルや酸化還元特性を調査する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ジラジカル錯体が溶液中で解離することが分かり,平成26年度は解離を防ぐための配位子設計,錯体合成及び速度論的安定性の評価を中心に行った.そのためカチオン認識能の評価に取り組む事ができず,今年度は研究に遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に合成したプロピレン基で連結した配位子を使うことで,速度論的安定性の格段の向上が見られた.今後,速度論的安定性のさらなる向上を目指した配位子の合成とジラジカル錯体の合成,及び合成したジラジカル錯体の速度論的安定性の評価を行う.さらに上記の検討から得られる速度論的に安定なジラジカル錯体を用いて,金属イオンや有機化合物など種々のカチオンが存在する溶液中における吸収スペクトルや酸化還元特性を調査する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度にジラジカル錯体と金属イオンの相互作用の様式を明らかにし学会発表を行う予定であったが,金属イオ ンを混合した段階でジラジカル錯体が解離することが明らかになった.そこで計画を変更し,ジラジカル錯体の解離を防ぐための配位子設計及び錯体合成を行ったため,未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
このため,次年度にジラジカル金属錯体と金属イオンとの相互作用解析と学会発表を行うこととし,未使用額はその経費に充てることにした.
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