研究課題/領域番号 |
25810086
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
中原 佳夫 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (10432600)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近赤外蛍光 / 金ナノロッド / 表面プラズモン / 蛍光増強 / シリカナノ粒子 / ナイルブルー |
研究実績の概要 |
実用性の高い蛍光細胞イメージング剤の開発を目指して、生体透過性に優れる近赤外領域で発光する蛍光性ナノ粒子の開発を行った。一般的に、近赤外領域で得られる蛍光は強度が比較的低いことが知られていることから、本年度は金ナノロッドの表面プラズモン現象を利用して有機蛍光色素の近赤外蛍光を効果的に増強することを試みた。文献記載の方法に従って、中空シリカナノチューブを合成し、さらにそれを鋳型として用い、塩化金酸を還元することによってシリカ層で覆われた金ナノロッドを作製した。中空シリカナノチューブの合成時において、用いる界面活性剤の親水基の長さを変更することでアスペクト比の異なる金ナノロッドを二種類合成した。得られたナノ粒子の形状を透過型電子顕微鏡により観察したところ、金ナノロッドのアスペクト比は2.3および3.3であることを確認した。また、吸収スペクトルを測定したところ、アスペクト比の大きな金ナノロッドの方がより長波長側に吸収を示すことがわかった。続いて、シリカ層に近赤外蛍光性色素(ナイルブルー)を静電相互作用によって吸着させ、さらにテトラエトキシシランのゾル-ゲル重合反応を行うことで、色素をシリカ表面に固定した。この際、中空のシリカナノチューブに対しても同様の色素固定化反応を行い、両者の蛍光強度を比較することで、金ナノロッドの表面プラズモン現象による色素の蛍光増強効果について定量的に検討した。結果として、アスペクト比が3.3の金内包シリカナノロッドの方が蛍光増強効果が大きく、ナイルブルーの660 nmにおける蛍光強度を約4倍増強できることが示された。今後の目標としては、本年度の研究成果で得られた知見を活かして、近赤外領域で発光するネオジム錯体を金ナノロッドの近傍のシリカ層に固定し、金ナノロッドの表面プラズモン現象によって、ネオジム錯体由来の近赤外蛍光を効果的に増強することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、近赤外領域で発光する希土類金属錯体のモデル化合物として、まずは、近赤外蛍光性色素(ナイルブルー)をシリカ粒子内に固定化した。一般的に、近赤外領域で得られる蛍光は強度が比較的低いことが知られていることから、金ナノロッドの表面プラズモン現象を利用して色素の近赤外蛍光を増強することを試み、結果として、増強された近赤外蛍光を得ることができた。この原理は、希土類金属錯体にも適用できると考えられる。このように材料合成に関しては進展が見られたが、物性等に関する評価が遅れているため、「やや遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、近赤外領域で発光するネオジム錯体をシリカナノ粒子内に固定化し、さらに金ナノロッドの表面プラズモン現象を利用してネオジム錯体由来の近赤外蛍光を効果的に増強することを試みる。蛍光特性に特に優れるナノ材料が得られたならば、それらを細胞内に導入して、蛍光細胞イメージング能について検討する。
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