研究課題/領域番号 |
25810087
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
東海林 敦 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (90459850)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コラーゲン IV / カテプシン B / 細胞浸潤 / 細胞外マトリックス / 表面プラズモン |
研究概要 |
腫瘍細胞の浸潤と,細胞膜界面の微小空間内で生じる細胞外マトリックス分解反応を同時かつリアルタイムで可視化することのできる手法を開発するために,表面プラズモンイメージング装置の開発を行った.清浄なガラスに金薄膜を蒸着したセンサーチップをプリズム上に設置し,平行光(P 偏光)を同プリズムに照射した際に反射されてくる光をCCD カメラで撮影した.金薄膜にスクロース溶液を添加した際に得られる画像の輝度が濃度に依存して高くなることから,本計測装置で SPR 像を取得できることが確認できた.金薄膜上に規則正しく正方形を配置した PDMS 基板のSPR 像を取得することで,本計測装置の解像度を評価した.その結果,反射光を集光してから再度,平行光にすると解像度が向上し,100 μm 程度であれば質の高い画像を得ることができることがわかった. 一方,細胞外マトリックス分解反応に腫瘍細胞から放出されるカテプシン B が深く関与することから,カテプシン B によるコラーゲン IV (細胞外マトリックス主要成分)の分解反応の活性を定量的に評価できる手法を開発し,コラーゲン IV 分解反応のメカニズムを考察した.カテプシン B によりコラーゲン IV の末端が分解されるとともにその 3 本鎖らせん構造が不安定化し,それによって分解反応が亢進するものと示唆された.この知見は腫瘍細胞の細胞浸潤と細胞外マトリックス分解反応の関連性を理解する上で重要になるものと考えられる.さらに,カテプシン B 濃度を評価するための低分子プローブの作製にも着手した.さらに,この開発した手法をカテプシン B に対する阻害活性評価法に展開した.阻害活性存在下において,カテプシン B 活性に基づき変化する SPR シグナル変化量が減少した.これらは細胞浸潤と細胞外マトリックス分解反応の同時可視化法を開発する際の基礎データになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面プラズモン共鳴イメージングは完成に近づいており,実際に SPR 像を取得することができる.また,コラーゲン IV をセンサー表面に固定化することで,カテプシン B によるコラーゲン IV 分解反応をリアルタイムで計測する手法を開発することができた.また,この方法を利用して,カテプシン B 阻害活性評価法の開発に展開している.この計測法は,細胞浸潤と細胞外マトリックス分解反応の可視化法を確立する際の基礎データとなり得るものである.
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今後の研究の推進方策 |
表面プラズモン共鳴イメージング装置の解像度を向上させるとともに,本計測法で使用するセンサーチップを作製する.また,簡便に阻害活性を算出できるカテプシン B 阻害活性評価法を開発する.細胞浸潤と細胞外マトリックス分解反応の同時可視化法に着手する.さらに,カテプシン B の低分子プローブを作製する.
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次年度の研究費の使用計画 |
PDMS 基板により表面プラズモン共鳴イメージング装置の解像度を評価してきたが,この基板では 100 μm 前後のサイズにおける解像度は評価できたが,より微小なサイズの解像度を評価することが困難であった.新たな解像度基準となる PDMS の設計や委託先の設計に時間を要することが確実な状況であった.これに要する費用を翌年度分の予算と合わせて使用する. 20, 50 μm, 100 μm サイズの正方形の溝があるPDMS 基板の作製を委託し,作製された PDMS 基板を用いて表面プラズモン共鳴イメージング装置の解像度を評価する.
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