研究実績の概要 |
入射X線強度を弱めずにスペクトルのバックグラウンドを低減させることで,入射X線として白色X線を用いる全反射蛍光X線分析法により得られる検出限界が改善できると考えられる.これまでにわれわれは,バックグラウンドを低減させるために,真空下で測定を行い入射X線の空気による散乱を減少させることが有効であることを明らかにした(S. Kunimura, S. Kudo, H. Nagai, Y. Nakajima, and H. Ohmori, Rev. Sci. Instrum., 84, 046108 (2013)).本年度はさらにバックグラウンドを低減させるための検討を行った.具体的には,試料台表面における入射X線ビームの照射範囲を狭め,試料台による入射ビームの散乱を弱めることの有効性を検討した.本研究では,入射X線として微弱白色X線を用いるポータブル全反射蛍光X線分析装置を使用した.本装置ではX線導波路を用いて入射X線ビームを平行化するとともにビームの高さ方向のサイズを調整しているが,本研究では,X線導波路と試料間にスリットを配置することで入射ビームの水平方向のサイズも小さくした.また,試料台の垂直方向における位置を高くすることにより,試料台表面における入射ビームの照射範囲を狭めた.これらの方法で入射ビームの照射範囲を狭めるとともに真空下で測定を行うことにより,バックグラウンドが低減することを明らかにした.また,X線管ターゲットからの特性X線に由来するピーク強度も低減するため,これらピークと重なり合う蛍光X線を放出する元素の検出限界を改善することができた.また,昨年度に引き続き本年度も,食品や環境試料に含まれる微量元素を分析するための前処理法について検討した.
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