研究課題/領域番号 |
25810095
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊原 正喜 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (50391868)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | [NiFe]-ヒドロゲナーゼ / 共鳴ラマンスペクトル / 低温測定 |
研究実績の概要 |
平成25年度までに、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現系を構築し、その発現系を利用して[NiFe]-ヒドロゲナーゼのランダムライブラリを作製した。さらに、スクリーニングを行い、水素分解能が向上した[NiFe]-ヒドロゲナーゼ変異体の単離に成功している。平成26年度は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現系の改良を行った。[NiFe]-ヒドロゲナーゼのスモールサブユニットC末端に付加していたタグの再検討や培養条件の最適化を行った結果、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ変異体の大量調製を可能にした。計画書では、マイクロカプセルを利用したハイスループットスクリーニング系の開発と、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ酸化速度の評価方法の開発を進める予定であったが、ハイスループットスクリーニング系の開発においては、宿主のバクテリアを閉じ込めるマイクロカプセルの共同開発相手とのマッティング等の問題から、現在のところ特筆すべき進展はない。一方で、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ酸化速度の評価方法の開発については、以下の通り、大きな進展があった。[NiFe]-ヒドロゲナーゼ酸化状態は、共鳴ラマン分光法や赤外分光法にて評価する予定であったが、共鳴ラマン測定においては、マイナス100℃以下にサンプルを冷却した場合シャープなバンドを得ることができ、酸化還元に伴うスペクトル変化から速度論が議論できることを明らかにした。また、低温ではレーザーによるサンプル劣化を低く抑えることができることも明らかになった。今後は、失活過程の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを急速凍結し、それぞれの冷凍サンプルの共鳴ラマンスペクトルや赤外吸収スペクトルを測定し、理論計算によるシミュレーションとの比較から、中間体や失活経路、失活速度定数を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、ハイスループットスクリーニング系の開発と[NiFe]-ヒドロゲナーゼ酸化速度の評価方法の開発を進める予定であった。[NiFe]-ヒドロゲナーゼ酸化速度の評価方法の開発では進展があった一方で、ハイスループットスクリーニング系の開発については、成果が上がっていない。計画していたハイスループットスクリーニング系では、ベクターを導入した宿主をそれぞれカプセルに包埋し、その中で培養、溶菌、さらには活性評価する予定であった。カプセルは、リポソームを検討するほか、様々なマイクロカプセルを共同開発する予定であったが、申請者がカプセル化の技術を有していないために、まだ試行錯誤の状況であり、共同開発者の確保もうまくいっていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、まずは[NiFe]-ヒドロゲナーゼ酸化速度の評価方法の開発に注力する予定である。[NiFe]-ヒドロゲナーゼの共鳴ラマン測定においては、マイナス100℃以下にサンプルを冷却した場合シャープなバンドを得ることができたが、今後は、低温での赤外吸収スペクトル測定系を立ち上げる予定である。その後、失活過程の[NiFe]-ヒドロゲナーゼを急速凍結し、それぞれの冷凍サンプルの共鳴ラマンスペクトルや赤外吸収スペクトルを測定し、理論計算によるシミュレーションとの比較から、中間体や失活経路、失活速度定数を解明する予定である。理論計算によるシミュレーションについては、すでに共同研究者を確保している。また、失活[NiFe]-ヒドロゲナーゼの構造を解明するために、共鳴ラマンスペクトルや赤外吸収スペクトル以外の測定についても検討する。
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