研究課題/領域番号 |
25810098
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高野 勇太 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (60580115)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光誘起電荷分離分子 / 脱分極 / フラーレン / ポルフィリン / 光線療法 / PC12細胞 / 金属内包フラーレン |
研究概要 |
平成25年度は当初計画通り「細胞親和性の高い光電荷分離分子の開発」と「光電荷分離分子が細胞膜電位に及ぼす影響の解明(1)」を行った。 前者の成果として、C60フラーレン-ポルフィリン連結型分子をベースとした細胞親和性分子として(a)四級アンモニウム部位を一つ及び二つ導入することで水溶性をコントロールした分子、(b)トリエチレングリコール部位を導入して両親媒性を向上させた分子、それぞれについて合成が完了した。(a)および(b)の分子の水溶液中での分子凝集挙動や各種分光学的特性を動的光散乱法や紫外・可視分光スペクトル測定、蛍光スペクトル測定を用いて検討したところ、それぞれに置換基導入に起因する挙動が確認された。特にここで、(a)の分子は顕著な水中安定性を有することが明らかとなった。この結果は、今後生体応用する際に、生体液中で分子が安定に存在し得ることを支持する有望な結果である。 また、フラーレン部位に金属内包フラーレンを用いることを想定して[4+2]型環化付加反応による分子変換法の開発に成功した。 後者の実験として、(a)および(b)の各分子について、ラット副腎褐色細胞腫由来のPC12細胞に導入後パッチクランプ法による細胞膜電位測定を行った。その結果、両者とも光照射に起因する膜電位の正電位側へのシフト(脱分極)が観測された。この結果から、分子(a)および(b)は当研究グループにおいて報告済のC60フラーレン-ポルフィリン連結型分子と同程度の脱分極誘導能力を有することが明らかとなった。更に、分子(b)においては、既存の分子と異なる脱分極速度や、電位変化を引き起こすことが示唆された。 今後は、上記において明らかとなった置換基効果の更に詳細な影響解明と分子改良、その作用メカニズム解明を行うことを通して、光電荷分離分子を利用した新規細胞機能制御法としての基盤確立を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初申請書に記載したアプローチに従い新規分子の合成を行い、予定通り完成した。 得られたそれぞれの分子について構造解析と性能評価を行ったところ、期待した通り、置換基の種類に依存した特異的な置換基効果が観測された。特に、本研究の中心となる光照射による細胞膜電位変化挙動において、置換基効果に帰着出来得る特異的挙動が確認されたことから、当初予定どおり順調に進展していると言える。また、並行して金属内包フラーレンの利用も検討し、その前段階としての分子変換法開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初計画通り、前述の分子群および、そこから新たに着想・開発した分子を用いて脱分極時に影響を受けているイオンチャネル同定をはじめとする詳細な細胞への作用メカニズムを明らかにする。 また、ラットから採取したニューロンといった初代細胞培養を用いて、光電荷分離分子を利用した細胞膜電位脱分極現象を観測する。これによって、本手法が株化されたモデル細胞(PC12細胞)だけでなく、各種の神経系初代培養細胞でも適応できる汎用性の高さを有することを示す。
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