研究実績の概要 |
平成26年度は、当初計画通り「光電荷分離分子が細胞膜に及ぼす影響の解明」および「光電荷分離分子による細胞機能制御法の有効性検証」を行った。 前年度から開発を続けているC60フラーレンーポルフィリン連結型分子について、分子の有する置換基効果が分子構造及び光電荷分離状態に及ぼす影響を一連の化合物を詳細に比較検討することで明らかにした。その結果、置換基を適切に選択することで、水中・細胞環境中にて電荷分離分子の凝集構造および電荷分離状態をコントロール出来得ることと、その電荷分離状態を利用することで細胞膜電位の光制御が可能であることを見出した。さらに、当初目標の一つとして掲げた「申請者が既に報告している分子系(J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 6092.;変化量+13 mV)よりも高効率の膜電位変化(本研究;+36 mV)」を達成した。 また、本研究により開発した分子をラット由来ニューロンに適応可能であることを見出すとともに、光誘起膜電位制御に起因する神経発火の変調誘起に成功した。このことから、本手法は神経発火に関連する種々の細胞機能制御に有効な新規手法となり得ることが示された。 さらに本研究のさらなる発展を目指し、フラーレン部位に金属内包フラーレンの導入を実現するために金属内包フラーレンの分子変換法を検討した。その結果、初めて金属内包フラーレンの炭素ケージ上に水素原子を導入することに成功した。この水素は更なる反応の基軸部位となり得るため、本成果からの知見を用いることで、細胞導入および電荷分離状態の利用により適した分子変換を容易にすると期待される。
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