研究課題/領域番号 |
25810108
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石田 玉青 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90444942)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金触媒 / C-H活性化 / 固体触媒 / アンモ酸化 / ビアリール |
研究概要 |
25年度は固体触媒を用いた芳香族C-H結合活性化によるC-C結合形成反応の検討を行った。分子内C-H/C-Hカップリングではジルコニア担持水酸化パラジウム触媒が高活性を示し、ジフェニルアミンからカルバゾールの合成に有用であることをすでに見出していたが、分子間C-H/C-Hホモカップリングでは酸化コバルトもしくはジルコニアに担持した金触媒が、担持水酸化パラジウム触媒よりも高い触媒活性を示すことを見出した。基質適用範囲を検討した結果、電子供与性官能基が置換した基質が電子不足性の基質よりも反応性が高かったことから、本反応は求電子置換反応型で進行していると考えられる。本触媒の金の価数は0価であり、三価の金錯体のみでは反応が進行しなかったことから、触媒活性種は0価の金であると考えられる。更に、三価の金錯体と酸化コバルト共存下ではわずかではあるが反応が進行し、反応後には酸化コバルト粒子上に金ナノ粒子が担持されていたことから、金錯体は反応途中で0価に還元されるだけでなく、酸化コバルトとの接合界面が反応に重要であることが示唆された。 また、シクロヘキサノンのアンモオキシメーションによるシクロヘキサノンオキシムの合成では、チタニア担持金触媒で反応が進行することを明らかにした。チタニアのみでもオキシムは生成したが、金ナノ粒子を担持することでオキシム収率が40%程度まで向上した。12員環のシクロドデカノンオキシムでも反応が進行し、対応するオキシムが得られた。イミンの二量体が主な副生成物であることが分かったので、今後二量体の副生を抑制する検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C-H結合活性化によるC-C結合形成は当初の目的通り、固体触媒で進行することを明らかにした。またパラジウムよりも金が高い活性を示すことを明らかにした。論文投稿に向けて、現在反応機構に関する知見を得るための実験を行っており、大型放射光施設(SPring-8)での触媒構造解析も予定している。 シクロアルカノンからシンクロアルカノンオキシムへの変換では、金触媒で最高40%の収率で目的物が得られており、当初の予想を上回る結果が得られた。しかし副生成物の抑制が課題であること、チタニアのみでも反応が進行することから、金の役割を明らかにすることが必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
担持金触媒を用いた芳香族C-H結合活性化によるC-C結合形成反応では、より詳細な反応機構を議論するためにX線吸収分光法を用いて反応中の金と担体金属の価数変化に関する情報を得る予定である。現段階では窒素を含む基質では反応は進行するものの、目的物が収率良く得られていないことから、この原因を明らかにし、含窒素化合物でも反応が進行する担体選択、反応条件最適化などを検討する。また、重水素で標識された基質を用いて反応速度に関する情報を得ることで、反応機構を明らかにする予定である。パラジウムと金では速度論的に触媒作用が異なる可能性がある他、生成物の位置選択性も両者で異なっていることから、金属によって位置選択性が異なる理由を明らかにするために、金属粒子サイズの違い、反応液中への金属のリーチング、担体効果などをを明らかにしていきたいと考えている。 シクロアルカノンのアンモオキシメーションによるオキシム合成では、チタニアでは副生成物の抑制が困難である可能性があることから、再度担体のスクリーニングを行う。現在、金ナノ粒子のサイズは3-5 nm程度であることから、金粒子を直径2 nm以下のクラスターサイズに小さくすることで、触媒活性の向上を狙う。更に、二元系ナノ粒子の担持などを試みて、触媒活性向上によって副反応を抑制できないかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は触媒調製と反応条件の最適化に重点を置き、備品等を新たに購入する必要がなかったため、研究費は主に消耗品費に充てたことで、次年度使用額が生じた。 26年度は所属機関が変更になり、新たに反応容器等を購入する必要があるのでミニオートクレーブ等の購入に充てる予定である。
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